海外ドラマはあなどれない

 松 岡 秀 治  (香芝市)

 「おい、そんなのありかよ」思わず目の前の雑誌に向かって叫んでしまった 。
 雑誌は「THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE](以下N.E.J.M)の昨年の六月号であるが、僕が仰天してしまった論文は「CARDIOPULMONARY RESUSCITATION ON TELEVISION](TVにおける心肺蘇生)というタイトルで、内容は「ER」「シカゴホープ」などのTVドラマに出てくる心肺蘇生の原因を分類して、その成功率を算出して現実の報告と比較しているのだ。日本流に言えば、ブラックジャックと国立がんセンターの術後五年生存率を比較したようなものだろうか。
 で、それを読んでの僕の驚きは皆様の思われるであろう「そんなの意味がないではないか」ではなく、「やられた!」という類のものだった。

 実は、僕は海外ドラマのファンというか「おたく」というか「研究家」というか。とにかく昔からの海外ドラマファンで、資料をとり寄せたりビデオでライブラリ−を作ったり、あるいはそれを使って資料誌を製作したりしてその分野では結構有名だったりする。パソコン通信のニフティ・サーブではTVフォーラムのサブ・シスに選出されて、海外ドラマ部門のメインスタッフをやっている。

 最近の気にいったドラマでは、「ER」と「シカゴホープ」があり、いずれもシカゴの病院を舞台にした医療ドラマである。「ER」はハーバード大出身の医師であり小説家でもあるマイケル・クライトンが原作・脚本を、「シカゴホープ」はプリンストン大学出身の弁護士デビツド・E・ケリーが製作・脚本を手がけたもので、いずれもテンポ・テーマ・内容など見事に現代を反映した優れたドラマである。 これらは、本国アメリカでも大ヒットし(どちらも視聴率的には話題の「]ファイル」よりもはるかに高い数字を得ている)、日本でも一部が放映され、高い評価を受けている。

 そこでパソコン通信の電子会議室の中でこれらの作品について話題をあげ、「ER」の症例などに関しては一般の人に分かり易いように解説したり、統計をとったりしていたが、そもそもこういったドラマは作り事なのだから、ドラマチックに助かる事が多いのは当然だし、そうでなければドラマとして成立しない、ということであくまでも「お遊び」のつもりであった。だから、まさかそれを論文にしようなどとは思いもよらなかったし、したところでそれが審査に通るとは思わなかったのだ。

 ところが、なんと米ヘルスサービス・リサーチセンターの連中はマジでそれをやって、しかもその論文もが世界的な一流誌でもある「N.E.J.M」に掲載されるとは。
 これは「ER」や「シカゴホープ」が「N.E.J.M」に掲載されるほど質の高いドラマなのか、はたまたこのような論文を投稿する医師が今までいなかったせいか。
 う−む、今さらながら奥深い世界である事を実感した。

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