| 新しい保健所のあり方を考える |
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今年(平成9年)の4月1日から、保健所の機能と母子保健関係の権限が、市町村に移譲される。これに伴い、保健所の位置付けはどう変わり、また、地域の保健対策は、どのようになっていくのだろうか。「地域保健元年」ともいうべきこの状況について、現・葛城保健所長の木下信英先生に寄稿してもらった(奈良新聞)。 昭和22年に「保健所法」が制定されてから、50年が経過いたしました。 戦後は結核をはじめとする感染症の時代であり、保健所の業務はこれらの伝染性疾患を予防するために結核検診、予防接種、乳幼児健康診査などを重点とした社会防衛を主体としてきました。 その後、医療技術の急速な発展に伴い疾患構造の変化をきたし、経済発展に伴う生活のゆとりも現れ、生活環境も見違えるほど改善されてきました。 これからの21世紀に向けては、少子・高齢化の時代へと向かっており、生活習慣により起こりうる循環器系の疾患(心臓病、脳血管障害、高血圧、糖尿病)がその主要疾患となってきています。特に高齢者の増加は、世界一の長寿国となるにいたって、世界中のどの国よりも急速に進展しています。 このようなことから、健康で生き生さした活力のある高齢社会をつくることが緊急の課題となり、昭和53年度からの市町村における総合的な健康づくり対策の推進、昭和58年の「老人保健法」施行以来、市町村を中心とした地域保健対策が図られるとともに、平成2年の福祉八法の改正により、保健・福祉サービスを市町村が一元的に提供するよう整備されてきました。 平成6年7月、「保健所法」が「地域保健法」と改正され公布、実施されているところです。 平成9年4月1日からは、保健所の機能と、母子保健関係の権限が市町村に移譲され、すべてがこの日から始まることになります。平成9年は「地域保健元年」ということになります。 保健所は今までいろいろな活動の中で直接・間接的に住民の皆様とかかわってまいりましたが、今後は健康診査、健康相談、栄養相談など、直接の地域住民の方々への健康づくりと福祉のかかわりは、その地域の一番身近な市町村が役割を受け持つことになります。 これからの保健所は、第一に、実施主体が市町村に移った健康づくり事業(母子保健、老人保健、学校保健、産業保健)を適正に運営・推進するため、情報・企画調整を行い、支援してまいります。 第二に、感染症関係では昨今、全国で話題となっている0157大腸菌や、最近国内で感染者数の異常とも言える増加がみられるエイズ、新たな変異が予想されるインフルエンザなどの脅威となる疾患の防疫を中心に、また、新たな局面を見せ始めた若年者の集団発性が予見される結核に対する撲滅作戦に取り組むことになります。 第三に、難病(パーキンソン病、悪性関節リウマチ、膠原病、運動ニューロン疾患など)といわれる慢性疾患や精神障害、老人性痴呆などの精神保健にかかわる保健・医療・福祉について、それぞれ個人の適正な処遇が受けられるような、一体的な組織体制の構築に向けて取り組んでまいります。 さらに災害時における地域の保健・医療の中核支援機関として、役割を果たします。 本来、地域保健法では、保健所は地域保健医療圏ならびに福祉圏に、原則一カ所を設置することになっています。奈良県では、地域保健医療福祉圏は3つになっておりますが、保健所は人口30万人程度に対して設置されることが全国平均となりますので、6カ所が存続することになります。 このような保健所の機能強化を進めるためには、専門職などの人材確保、資質の向上が急務でありますが、経済成長の鈍化・行政改革・リストラ、また地方分権推進委員会の「くらしづくり部会」では、保健所の必置規則の見直しが考えられているところです。これらにより多難な船出が予想されます。 県民の皆様方にとって、各々の地域に住んで良かったといえる町づくりを支援し、安全な生活環境、どこでも必要なときに良質な保健・医療・福祉サービスが受けられるためにも、これからの保健所の活動はますます必要かと考えます。 機能強化に際し、職員一丸となって努力してまいりますので、どうか皆様方のご協力ご支援をいただきますようお願い申しあげます。 |
| 木下 信英 |
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