| 流産した時―次の妊娠へのステップです― |
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山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ」は、妻の倍賞智恵子が流産したため、一本気な高倉健がショックを受けて、荒れて町で喧嘩をし、人をあやめてしまいますが、その時、流産の手当てをした産婦人科医の、もう少し心配りのある説明があれば、ドラマが生まれなかったかもしれません。 というのも、初期の妊娠の流産は決して稀なものでなく、10%から15%もあるからです。しかも流産の原因の90%以上は、お母さんが無理をして養生しなかったとか、お母さんの体や子宮が悪いためでなく、宿った受精卵がたまたま初めから欠陥を持っていて、途中から発育が止まるためといわれています。流産する受精卵には、体の設計図ともいえる染色体に異常があることが多いという報告もあります。結局は、元気な赤ちゃんに成長できないわけです。 よく植物に例えて説明をするのですが、種を蒔いても発芽するのは全部ではありません。また、芽を出しても弱い個体は枯れてしまって、元気な苗だけが立派に育ちます。同じように人の子宮は、丈夫な胎芽を選んで育てているのかもしれません。 妊娠初期の流産の考え方は、この約20年の間ですっかり変わりました。超音波の機械で子宮の中が大変よく見えるようになったからです。妊娠6週にもなると、胎児(まだ米粒ぐらいの大きさで胎芽ともいいます)の心臓の拍動を、ほとんどの方で見ることができます。流産となる時は、多くの場合、早い時期に発育が停止していることが、超音波診断で判ります。 この場合、妊娠六週とは月経が28日ぐらいの周期で正確に来る場合の、最後の生理の初めの日から計算して6週目で、実際の受胎から4週目です。 ちなみに市販もされている妊娠判定薬は妊娠四週、受胎からは約2週間たつともう陽性になり、大変鋭敏です。そのため、早い時期に妊娠がわかる方も多いですが、1割以上は大きくならずに、いずれ流産となったり、また稀に子宮外妊娠もありますので、産婦人科医の診察を受けて経過を見る必要があります。 妊娠初期に1回以上、性器出血を経験する方は、30%もあるともいわれます。出血の有無と流産とはあまり関係ない、という考え方があります。しかし、「駄目な時は駄目。育つ時は育つ」というのは言い過ぎだと思います。出血があっても胎児が元気にしているときには、できるだけ安静に、そっとして胎児の発育を見守りたいものです。 もし、流産をしてしまった時に、また妊娠してもくせになって流産を繰り返して、もう赤ちゃんができないのではないかと心配される方がありますが、少なくともその流産で、前よりも条件が悪くなることはありません。むしろ、次の妊娠のためによりよい環境となる場合すらあります。 また、稀に免疫の異常などで、何回も流産される方がありますが、そのような習慣性流産に対しても、治療方法が進歩しています。 流産をしたあとに、すぐ妊娠して来院され、今度は元気な赤ちゃんを出産されるのに立ち会うことは、とってもうれしいものです。 |
| 坂口 守彦 |
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