| 30分間隔なら『中毒』『根性』いらない禁煙を |
禁煙外来に来られるほとんどの方が、異口同音に「意志が弱くてたばこをやめられない」と言われます。たばこは意志の強い人しかやめられないものでしょうか。ある調査では、たばこを吸っている人の80%が、やめられるものならたばこをやめたい、と答えていますが、実際に独力でたばこをやめることができたのは、そのうちの20%足らずだったということです。 以前に比べて禁煙の場所がふえ、スモーカーの人たちは、駅などの公共の場で肩身のせまい思いをしています。たばこをやめた方が良いとは思うけれども、やっぱりたばこをやめられなくて、というスモーカーの人たちが多いのです。 なぜこんなにたばこはやめにくいのでしょうか。 53歳のTさんも禁煙外来に紹介されてきたスモーカーの1人です。「意志が弱くてやめられない、何回禁煙にチャレンジしてもだめでした」とのことでした。 Tさんの仕事は営業マンです。商談の時に、相手のペースにのみこまれまいと、たばこを吸い始めたのがきっかけで、今では1日中たばこをくわえている、という有り様です。高血圧もあって医師から何度も禁煙をすすめられ、自分でもトライしてみるのですが、商談で相手と向かい合うと、つい、たばこに手が出ている、どうも意志が弱くて・・・ということでした。 たばこは人によっては本当にやめにくいものですが、それには2つの原因があるといわれています。1つはたばこにふくまれるニコチンに麻薬と同様の「依存症」(中毒)とよばれる作用があるからで、Tさんは朝、目を覚ましてから5分以内にたばこがほしくなる、典型的なニコチン依存状態でした。たばこを1本吸い終わって次のたばこをじっとがまんしてみるのだけれど30分が限界とのこと、これもニコチン依存状態になっている1つの証拠です。 からだの中のニコチンは、たばこを吸い終わって30分で減ってゆきますから、30分すれば無性にたばこを吸いたくなるのです。たばこというものの持つ魔性、といっても良いでしょう。このニコチン依存状態はTさんがたばこの意志とは関係ないものですから、Tさんがたばこをやめにくいと感じたのは当然です。 そして、もう1つのたばこをやめにくい原因とは、たばこを吸うことが長年の間にすっかり身にしみついた癖になっていることです。 Tさんは20歳すぎから現在までの30年間、1日50本のたばこを吸ってきました。たばこの箱を取り出して中から1本を出し、口にくわえて火をつけて、といった一連の行動を、1日50回、1週間で350回、1年で18,250回、そして30年間で54万回もくりかえしてきたのです。ですから、もう意識しなくても、気が付けばたばこが口にあります。おいしいと思わない時でも、ついたばこを吸ってしまっていたのです。 Tさんがたばこをやめるには、ニコチン依存状態を上手に断ち切り、身にしみついたたばこの癖を変える必要がありそうですね。 では、どうやってニコチン依存状態やたばこの癖と縁を切りましょうか?一昔前流行した「根性もの」のように、ひたすら歯を食いしばってがんばりますか? 禁煙の盛んなアメリカやヨーロッパでは、禁煙のメカニズムが科学的に分析され、無駄の少ない禁煙法が幾通りも研究され主流となっています。そこには「ど根性」は登場しません。 禁煙外来では、この諸外国の方法も参考にして、たばこによって悪化するいろいろな病気を持つ人たちの禁煙チャレンジを支援してきました。うまくゆく禁煙には、ある程度手順があります。禁煙の先輩たちが残してくれた手順で禁煙するほうが、やみくもに禁煙を試みるより楽なのです。 禁煙外来でたばこをやめ続けている元スモーカーの人たちを見ますと、皆さんごく普通の人たちです。Tさんもその後きっぱりとたばこをやめていますが、決して意志の強い「ど根性」の人ではありません。たばこをやめ続けるのに本人の意志が必要なのは言うまでもありませんが、意志の強さは普通の社会生活ができるという程度で十分のようで「ど根性」は、なくても良いのです。 この禁煙外来での様子をシリーズで紹介してゆきましょう。その中で、禁煙の手順も紹介しますので、自分は意志が弱いからたばこをやめられない、とあきらめてしまわずに、もう一度禁煙にトライしてみませんか。 |
| 高橋 裕子 |