| 最善策は『すっぱり』 ちょっと休むつもりも |
禁煙しようと思っては見たものの、決心がつかない、未練が残る、ということでなかなか禁煙日が決められない人も現実には多いのです。減らしていると、そのうちに禁煙できるだろう、というのはまず無理。禁断症状がだらだら続いて苦しいばかりで禁煙にはなりません。禁煙してみようかな、と思ったらどこかでスパッとやめる。いつまでも引きずらないのがコツです。禁煙外来に来る人たちのほとんどが、最初は「スパッとやめるのはどうも自信がない」と言います。スパッとやめる方がだらだらするよりずっと楽ですから、私はまず、すっぱりやめる方法をおすすめします。実際、大抵の人はやってみると出来るものです。案ずるより産むが易(やす)し、なのです。 それでもどうしても心配、というのなら、やめる日を決めてから、禁煙への準備としてたばこを減らしていく。これなら禁煙までゆけますが、あまり楽な方法ではありません。禁断症状の最初の何時間かを繰り返し味わうことになるからです。 高等学校の校長先生のNさんは、大腸のポリープを指摘されたのをきっかけに禁煙外来に来ました。「いっぺんに変化を来すのは身体によくない」との信念をお持ちで、1「日60本だったのを50本に減らし、40本に減らし、ついに20本まで減らしたとき「これだけ毎日つらい思いをして減らすくらいなら、いっそ1本も吸わない方が楽だろう」と、禁煙を決心しました。自分の誕生日を禁煙スタートの日に決め、その日にむけてたばこを吸わない時間を徐々に延ばしていったのです。いわば、禁煙の予行演習です。そしていよいよ誕生日を期に、きっぱりとたばこをやめました。 年輩の方にこの方法を選ぶ人が多いようですが、少しずつ減らす方法で禁煙までゆけた人はNさん同様に、きっぱりとやめる日を必ず決めて成功しています。 そうはいっても、やっぱりやめる決心がつかない、という人もいます。それではたばこをやめるのではなく、いったん休む、というのはどうでしょう。 Kさんは、明るい下町のおばさんです。20歳頃は隠れて吸っていたたばこが徐々に増え、1日60本を超す日も多くなりました。10年前にご主人が脳梗塞(こうそく)で倒れ、口が利けなくなったご主人の身の回りの世話を続けるうち、夜中にさみしくて一人でたばこを吸うようになり、どんどん本数が増えたといいます。それが、55歳でたばこをぴたっとやめました。Kさんに聞くと、夜中に急に頭痛がしたそうです。ひょっとして脳腫瘍(しゅよう)かなと心配して受診し、結果はなんともなかったのですが、そのとき、もし自分がここで病気になってしまったらこの主人はどうなるんだろう、と考えたそうです。そして、「やっぱり今は病気になるわけにいかないから、今のうちにちょっとだけたばこを休んでみようかなって思ったの。こんなに好きなたばこだったら、一生やめるなんて事はもったいないから、ちょっと休むだけ。そう、60歳か7 0歳になって、もう誰の世話もしなくてよくなったら、またその時吸うかどうか考えてみようと思ってるのよ。」 こうしてKさんは、一生やめるわけないと思っていたたばこをやめました。今、Kさんは65歳。ご主人は亡くなられ、ある意味で自由です。「たばこはどうしていますか」と私が尋ねると、にっこり笑って「吸ってもいいんだけど、なんだかあまり吸いたくなくなっちゃった。それにいつでも吸えるのだから、楽しみを先に取っておくのもいいでしょ」と、いかにも彼女らしいさわやかな答えでした。 たばこをやめる、と深刻に考える必要はないのです。しばらくたばこを休む。そして、休んでよかったと思ったら、もう少し休む。例えば「1日だけ」とか「1週間だけ」とか軽い気持ちでスタートして、禁煙期間を延ばしてゆくのも良い方法だと思っています。 |
| 高橋 裕子 |
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