| 利点の多さ気づいて においの感じ方目安に |
![]() 禁煙すると、必ず「これは良かった」と言えることが、後から思いがけない形で出てくるから不思議です。 会社を息子さんに任せて隠居しているMさんは72歳、高血圧と高脂血症で通院中です。血圧の薬を長年飲んできましたが、どうも最低血圧(血圧の2つの数字のうち小さい方)が高すぎると、いつも医者から言われます。「たばこをやめろって医者は言いますけど、50年も吸ってきてこの年で、たばこやめてもさがりますやろか」と尋ねられました。 たばこのなかのニコチンは全身の血管を細くします。細くなって血管に血液を送るには大きな圧力が必要になりますので、たばこを吸っていると血圧は慢性的に高くなります。たばこをやめると、血圧は普通10から20は下がります。年齢が高くても、血圧は下がる人が多いのです。 このように説明しますと、「なるほど、そういうことならしようがない、自分のためです」ときっぱりとやめられました。しかも、たばこをやめてからは「せっかく自分の身体のためと思ってやめたのだから、食事もちゃんとしなければダメですよね」と減塩もはじめました。これには家族がびっくりです。Mさんの息子のお嫁さんは薄味の食べ物を出したかったのだけれど、いつもMさんが「水くさい」と言うので、味付けを濃くしていたとのことで、さっそくこれを機に食事を薄味に変えました。Mさんの決心が家族全体の食事の改善につながったのです。血圧ももちろん下がりました。 これほど大きなことでなくても、たばこをやめて良かったことは後からいろいろと出てきます。 声が出しやすくなる、のどがすっきりして咳(せき)や痰(たん)がへる、お肌の色つやが良くなる、においや味が良くわかるようになる、胃の具合が良くなるといったことは、禁煙して1週間以内にでてきます。血圧が下がる、頭痛が消えるといったことは1カ月くらいです。 このような医学的なことのほかにも、禁煙して良かったこととしてよくあげられるのが、節約になることです。家や車がヤニで汚れなくなっての節約、ふとんや畳の焦げ穴の節約、たばこを買いに行く時間の節約、医者通いが要らなくなっての節約があります。1箱200円余りのたばこ代だけでも、1ヵ月でちょっとしたものが買える額になります。 家族の苦情が減ることも、禁煙のありがたい点です。今まで家族の前ではたばこを吸わないようにしていた人のなかには、食事の後で家族は楽しくおしゃべりしているのに、たばこが吸いたいばっかりにいつも自分の部屋に引っ込んでいたけれど、禁煙してはじめて子供たちとゆっくり話ができた、と言う人もありました。 禁煙は続けることに値打ちがあります。続けるためには、自分で自分を励ますことです。その1つの方法が、禁煙してでてくる「良かったこと」に自分で注意を向けること。禁煙を続ける気持ちに余裕が生まれ、禁煙を長く続ける力づけにもなるのです。禁煙外来で大勢の方の禁煙のお手伝いをしてきましたが、禁煙した人たちは全員、何かしらの禁煙して良かったということが出ていますので、必ず自分にも良いことが出ると思って間違いありません。 ところでたばこをやめたあと、また吸ってしまう、いわゆる「再喫煙」はいつごろが多いと思いますか? 「3日、3週間、3カ月」これが注意時期です。あともう少しすればニコチンの禁断症状が消えて楽になる、という時期に我慢しきれずに吸ってしまうのが禁煙をはじめて3日目。「どれくらいたばこが嫌いになったか試してみよう」とわざわざ吸ってみて、もう一度、たばこのとりこになってしまうのが3週間目。同僚に誘われてアルコールを飲みに行って、雰囲気に負けてたばこに逆戻りしてしまう3カ月目。 たばこはあの手この手で誘惑してきます。「たった1本くらいなら良いだろう」、これが再喫煙の常套(とう)文句です。そして、実にあっさりと今までの苦労を水の泡にするのです。 習慣性、中毒性という点では麻薬に並ぶといわれるたばこ。いったん、たばこに魅せられた人間は、一生たばこ嫌いにはなれないと思っておく方が良いのかもしれません。たばこを吸ったことのない人たちは、たばこのにおいが臭いと言いますが、もし、あなたがまだ、たばこのにおいが臭いと感じられないならば、簡単にたばこに逆戻りする時期にいると考えて、決して油断しないでください。いったんやめていたたばこを1本吸って、簡単にやめられるほど人間の意志の力は強くないことが多いのですから。 |
| 高橋 裕子 |