デング熱の基本情報について

2015.06.12

奈良県医師会 理事  春日 宏友(感染症対策担当)

2014年夏には蚊に刺されることによって伝染するデング熱の、69年ぶりの国内感染・流行が起こり、大きな話題になりました。今年も夏を迎えて蚊の飛び交うようになって来、デング熱の再流行が懸念されます。デング熱、蚊のことをよく知って予防するようにしましょう

 

1.デング熱の原因

デ ングウイルスによって起こる病気で、ウイルスには4つの型があります。デングウイルスを保有している者の血液を蚊が吸血し、この蚊が非感染者を吸血するこ とで感染が起こります。感染を媒介する蚊の種類は、東南アジアなどに生息するネッタイシマカや、日本固有のヒトスジシマカです。必ず蚊を介して感染し、人 から人へ直接感染することはありません。

 

2.デング熱の症状

デングウイルスに感染してから発病までの日にち(潜伏期間)は3~7日ですが、全員が発病するわけではなく、50~70%の人では発症しない(不顕性感染)とされています。

症状は、突然の高熱、頭痛、骨関節痛、発疹、嘔気・嘔吐などで、特に発熱はほぼ全例でみられ、意識が遠のくほどの高熱のこともあり、また、一旦解熱しても再度発熱する(二峰性)ことがあります。通常、発病後2~7日で解熱し、そのまま治癒します。約半数には発疹がみられ、病初期にみられる皮膚紅潮、解熱時期 にみられる点状出血、健常な皮膚が島状に白く残る麻疹(はしか)様の紅色の湿疹など、いろいろな皮膚病変があります。

ほとんどのデング熱は これで治りますが、1~5%は重症化してデング出血熱といわれる状態になります。デング出血熱になると、血管から血液の液体成分(血漿)が漏れ出 したり、血を固める成分(凝固因子や血小板)が減少し、出血が止まらなくなります。さらに血圧が低下してショック状態になることがあり、これを重症デング と呼びます。放置された重症デングの致死率は10~20%といわれていますが、適切な治療で致死率は1%未満に減少させることができます。なお、2006 年から2010年の間に日本国内で診断されたデング熱患者556例での死亡者はいませんでした。

 

3.デング熱の治療法

デングウイルスに効く抗ウイルス薬はなく、症状にあわせた対症療法を受けていただくことになります。点滴などによる水分補給と解熱剤による解熱程度です。但し解熱剤のうち、アスピリンは出血傾向を助長するので使用しないようにします。

 

4.デング熱を疑ったとき

東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国などで蚊(ネッタイシマカなど)に刺され、3~7日後に突然高熱(38℃以上)が出てきたときにデング熱を疑います。昨年のように国内感染が発生するようなときには、日本にいる蚊(ヒトスジシマカ)に刺されたのちに発熱したときも疑う必要があります。流行地を旅行中や国内でも流行している地域で蚊に刺されてデング熱が心配なときは空港などの検疫所や保健所にご相談ください。また、蚊に刺されたあとで発熱などの症状が出てきたときには医療機関を受診してください。

 

5.デング熱の予防法

現在のところワクチンはありません。一番の予防法は、蚊に刺されないようにすることです。蚊の居そうなところでは長袖、長ズボンを着用する、虫除けスプレー を使用するなどの対策を心がけてください。また、蚊を発生させないため雨水などが溜まった容器などを放置せず、観葉植物などの受け皿などにも水を溜めない ようにしましょう。

なお、ネッタイシマカは本来日本にはいませんが、海外から荷物などとともに入国してくる可能性はあります。日本での主な 媒介蚊は、もともと日本に生息するヒトスジシマカであるとされています。ヒトスジシマカの分布は盛岡以南、木の茂みや公園に生息しており、行動範囲は 50~100mとされていますが、自動車などで遠くまで運ばれる可能性もあります。しかしその活動は5月中旬から10月下旬とされており、国内感染が発生した場合も11月にはいれば終息する可能性が高い、とされています。

 

 

以上、今夏もデング熱の流行が危ぶまれていますので十分にご注意ください。なお、デング熱は高熱や湿疹が出ても治癒してゆく病気で、万一重症化しても、日本の医療レベルからすればエボラ出血熱や日本脳炎のように不幸な転帰をとることはほとんど考えられませんが、デング熱かも、と疑われたなら、感染拡大を防ぐためにも必ず医療機関でご相談ください。

 

 ○デング熱に関する基本情報、発生状況等については、こちらをご確認ください。

   →厚生労働省HP『デング熱について』

 

― あわてず、騒がず、落ち着いて対応してください。

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