奈良県医師会 竹川 隆
人の体の細胞を支えている「膠原線維(こうげんせんい)」というところに、主に炎症性の病変(発赤・発熱・疼痛・腫脹)が見られる病気をまとめて「膠原病」と名付けています。「膠原線維」とは、細胞と細胞を結びつけている「結合組織」の構成成分の一つです。結合組織は全身に存在し、細胞への栄養分を補給し細胞からの老廃物(ろうはいぶつ)を排除するなど、各細胞が生きていくことに深く関わっています。
炎症が生じる原因は、血液中で自分自身の組織や細胞に対して攻撃を加えてしまう抗体のはたらきによるものと考えられています。しかし、完全な病態の解明はできていません。主な治療薬は副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドを中心とする免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)です。近年では、最新の技術により開発された「生物学的製剤」の導入で治療概念が大きく変化し、特に、関節リウマチに関して治療効果が飛躍的に向上しています。
膠原病には多くの病気があり、その症状は様々ですが、発病初期にはある程度共通する症状がみられます。典型的な症状には、原因不明の発熱、関節や筋肉の痛みやこわばり、皮膚の発疹(ほっしん)、黒ずみ、手の指先が白くなったり紫色になるなどがあります。その他に、リンパ腺の腫(は)れ、手足のむくみ、体重の減少、疲労感などの症状がでることもあります。注意が必要なのは、これらの症状の全部が同時に生じるわけではなく、初期は日常生活に支障がなくても、徐々に悪化し、慢性化してゆくことです。早期に発見し、早期に治療することで、症状を軽くしたり、進行を食い止めることもできるため、初期症状を見逃さないことが重要です。
膠原病とされている疾患を次に挙げておきます。
代表的なものとして、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎/多発性筋炎、結節性多発性動脈炎、混合性結合組織病があり、これらは古典的膠原病と呼ばれています。
現在ではこれらに加えて、シェーグレン症候群、顕微鏡的多発血管炎、Wegener肉芽腫症、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏性血管炎、ベーチェット病、コーガン症候群、側頭動脈炎、成人スティル病、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症なども膠原病・膠原病類縁疾患に含まれます。
膠原病の初期症状に気づいたら、かかりつけ医に相談しましょう。