肥満は万病のもと

  県医師会    赤井 靖宏

 わが国では肥満が増えています。特に男性では戦後から一貫して肥満度が上昇しています。みなさんはいかがですか?

「年を取るにつれてお腹がでてきた」という方も多いのではないでしょうか?

 最近になって肥満は多くの病気の危険因子であることが分かってきました。糖尿病や高血圧が肥満と関連することはよく知られていますが、腎臓病や睡眠障害などにも関連していることがわかってきました。また、大腸がん、前立腺がん、乳がんや子宮がんなどの発症を増やすと考えられています。さらに、加齢によって筋肉量や骨量が減ったところに肥満が加わると、腰痛や膝痛などの原因になり、ひいては転倒して骨折を起こすこともあります。つまり、肥満は「見た目」の問題ではなく、直接皆さんの健康を脅かす状態です。肥満は自分の頑張りである程度コントロールできるものです。肥満していないみなさんはこれからも太らないように、肥満している方は肥満を解消するように自己コントロールをしていただきたいと思います。

 日本人は、欧米人のような「超肥満」が少なく、おなかがポッコリ出た「小太り肥満」が多いとされています。最近になって、均等に肥満している人より、肥満度は低いけれども、おなかがポッコリ出た人で死亡率が約2倍高いことが報告されました。つまり、日本人に多いおなかがポッコリ出た「小太り肥満」は悪性の肥満と考えられます。

 なぜ年をとると肥満するのでしょうか? このことを知ると、肥満にならない、あるいは肥満を解消するポイントが分かります。実は、年をとると筋肉量が減り、体を最低限維持するためのエネルギー量が減ります。このため、年をとっても若いころと同じように食事摂取をしていると、いつのまにか栄養過多となり、余分なカロリーが脂肪になって体に蓄えられてしまいます。さらに、加齢で運動量が減るとさらに筋肉が減ります。筋肉量が減って脂肪が増えるので、体重は変化しない場合もしばしばあります。この結果、体重を測っているだけでは、いつの間にか肥満になっていることがあります。

 それでは肥満にならないように、あるいは肥満を解消するためにはどうしたらよいでしょうか? まずは、食事に気を付けましょう。繰り返しますが、年を取ってから若いころと同じような食事をしていると、体脂肪が増えて肥満になりやすくなります。このため、「腹八分」「野菜を多く」「間食・夜食を避ける」「お酒はほどほどに」など、特に注意してください。

 次に運動です。脂肪を効率よく消費するには、ウォーキング、プールでの運動、軽めのジョギング、自転車こぎなどの有酸素運動が有用です。1回10分のウォーキングを1日数回行うことも有用です。忙しいみなさんは、通勤途中、昼休みなどを利用して歩いてみてください。

 万病のもとである肥満にならないように、また、肥満を解消するように頑張りましょう。