奈良県医師会 中井 義明
近くで急に花火や爆発音、競技開始のピストル音などの大きな音を聴くと、突然耳が聞こえなくなる、つまり難聴になることがあります。ほかに、頭を強く打った時や鼓膜(こまく)が破れた時などでも急に難聴になることがあります。
一方、原因が分からず、突然、難聴になることがあります。これを「突発性難聴」と呼びます。以前に歌手の浜崎あゆみさんがこの病気になり、良く知られるようになりました。40~50歳代に多いのですが、どんな年齢の人にも起こります。また、時に耳鳴りやめまいを伴うことが特徴です。
耳の外から入った音は、鼓膜を振動させ、これが中耳(ちゅうじ)に入り、次に聞こえの細胞がある内耳(ないじ)へ、その後、神経を通り、脳に達して音として聴こえます。突発性難聴は、このうち、内耳の故障で起こります。
内耳には、約一万五千個の感覚細胞があります。この細胞は、いったんなくなると、皮膚など身体の他の細胞のようには再生されません。この内耳が故障して起こる難聴を感音(かんおん)難聴と言い、突発性難聴の特徴となっています。
だいたい、1週間以内に治療を始めると、治る率が高いので「原因がわからないのに、急に聴こえにくくなった」という症状を感じたときは、感覚細胞が破壊されてなくならないよう、出来るだけ早く耳鼻科の医療機関を受診してください。
以前は、症状が出てから耳鼻科の医療機関を受診するまでにかなり日数が経過している人が多かったのですが、最近、知識の普及からか早めに受診する人が多くなり、好ましいことです。
同じような症状で耳管(じかん)がせまくなる病気や聴くための神経の腫瘍(しゅよう)、またリンパの病気や他の難聴など別の病気の場合も多いので様々な検査をします。突発性難聴と診断されたら、心身を安静させて薬物療法を行います。治療の開始が早いとよく効きますが、症状が出て1週間以上経つなど治療が遅くなると治らない場合も多いので、繰り返しますが、早めの受診が必要です。
―3月3日は「耳の日」。