過換気症候群

奈良県医師会 池田 富一

過換気症候群は、緊張や不安、興奮や恐怖など、精神的な要因で起こります。また、過呼吸症候群とも呼ばれています。

突発的に息が荒くなり、手足や唇がしびれ、動悸(どうき)、胸痛、吐き気、けいれん、発汗などの症状が出ます。若い女性に多い病気ですが、男性や高齢者にもみられます。

発作は、呼吸を速く繰り返したために、血液中の二酸化炭素が減って血液がアルカリ性になり、筋肉や神経に異常が生じるために起こります。

この発作が起こると、時には息ができなくなり、手足が硬直して失神することもあります。ひどい時は、「このまま死ぬのではないか」という恐怖感に襲われます。

何事に対しても不安になりやすい性格の人に発作が起こりやすいのですが、性格に関係なく、強いストレスやマラソンなどの運動でも起こることがあります。たとえば、女子の高校のマラソン大会で、ゴール直後に過換気症候群の発作を起こすことがあります。また、遊びなどで数分間、わざと呼吸を速めるだけで、発作を誘発してしまうことがあります。さらに、過労や寝不足でも発作が起こることがあります。

狭心症や、気胸(ききょう)という肺に穴があく病気、また肺炎など、過換気症候群と区別しなければならないものもあるのですが、その人が経験してきた病気(病歴)や発作の状況、もしくは症状などから、比較的簡単に診断がつきます。

治療は、一般的に「ペーパーバッグ法」を行います。このペーパーバッグ法とは、紙袋で口と鼻をおおい、自分のはいた息を再び吸い込みます。息を吸い込むことを繰り返すことにより、血液中の二酸化炭素の濃度が上がり、症状がやわらいできます。

しかし、突然に過換気症候群の発作が起きたために不安が強すぎるときは、ペーパーバッグ法だけでは発作は治まりません。このような場合は、精神安定剤の注射がよく効きます。

この病気について主治医から詳しい説明を受け、知識をしっかり身につけることが大切です。