前立腺肥大症は高齢男性に起こる泌尿器科的QOL疾患の代表的なものであり、60歳以上の男性の3人に1人は罹患していると考えられる。一方、前立腺癌の頻度は肥大症のおよそ10分の1であるが、食生活の欧米化にともない年々増加しつつある。今講演において両疾患の概説を行う。

前立腺は、膀胱下方に位置し、その中心を尿道が貫通している。前立腺は性路の一部を形成し、分泌される前立腺液は精液の30%に相当する。前立腺重量は生後徐々に増大し、20~30歳をピーク(平均30gr)に、以後ゆるやかに減少する。しかし肥大症の場合は50歳頃より減少から増大に転じる。責任病変は内腺領域に発生する肥大結節であり、肥大結節そのものによる尿道の閉塞(機械的閉塞)と肥大結節内の平滑筋繊維に含まれるα1レセプターを介した結節の収縮による尿道の閉塞(機能的閉塞)により排尿症状(排尿開始遅延、尿勢低下、排尿時間延長、尿切れ不良など)が出現する。また、尿道閉塞による膀胱への過負荷や加齢が膀胱の無抑制収縮を惹起し、蓄尿症状(頻尿、切迫尿意、残尿感など)の原因となる。前立腺肥大症の診断にあたって、問診票(国際前立腺症状問診票とQOL問診票)により自覚症状の程度評価、尿流動態検査により尿勢と残尿量の計測、直腸指診とUSにより前立腺の大きさの評価がなされる。前立腺癌との鑑別に血中PSA(前立腺抗原)値の測定が重要である。前立腺肥大症診療ガイドラインでは問診票の症状スコア、QOLスコア、尿勢と残尿量、USによる前立腺体積の4項目でそれぞれ軽症、中等症、重症に分類され、さらに総合重症度判定がなされる。重症度を参考に肥大症の治療法が選択されるが、当然、患者の年齢や合併疾患、ADL、社会的要因も考慮する。治療法として、@無治療経過観察、A薬物療法、B低侵襲治療、C手術、Dカテーテル留置がある。@は症状スコアで軽症が対象となり、生活指導を行う。Aは総合重症度が軽〜中等症に良い適応であり、現在α1ブロッカーが標準薬物である。副作用としてめまいや立ちくらみがある。Bは総合重症度で中等~重症が対象となり、レーザーやマイクロ波による高温度治療や尿道ステント留置術がある。Cは重症患者、尿閉を繰り返す患者、膀胱結石合併例に適応となる。経尿道的前立腺切除術が標準手術である。Dは尿閉時の緊急処置などに用いられる。手術は最も侵襲性が高いが、最も有用性が高い。現時点で治療のgold standardである。

非専門医が50歳以上の排尿障害を訴える男性を診る場合、まず、問診票、PSA測定、USによる残尿測定を行い、問診票で重症、PSA4.0 ng/ml以上、残尿量が100ml以上のいずれかの場合は専門医への紹介が望ましい。それ以外の場合は、α1ブロッカーを投与し、12週目に再評価を行う。症状改善が乏しい場合は専門医へ紹介する。治療が良好なら、そのまま継続あるいは間欠投与を考慮する。α1ブロッカーは肥大腺腫を退縮させる効果を持たないため、肥大症が根治することはない。比較的若年より内服を開始した場合、効果を維持するために長期間服用することになる。期待余命を考慮し、低侵襲治療や現時点で最も根治性が期待できる手術も視野にいれるべきである。

前立腺癌は50歳頃から発生のリスクが高くなる。前立腺癌に特異的な症状はなく、基本的には前立腺肥大症と同様である。発生母地は主に外腺領域である。診断は直腸指診、血中PSA値測定、USMRIで行われるが、最終的には前立腺針生検による組織診断が必要である。早期癌の検出にはPSAが最も優れている。治療として@無治療経過観察、A前立腺全摘除術、B放射線療法、C内分泌療法、D化学療法がある。@は偶発で悪性度の低い場合やきわめて高齢者の場合、Aは75歳以下の前立腺限局癌、Bは前立腺限局癌、Cは局所浸潤癌、有転移癌や高齢者の前立腺限局癌に適応となる。Dはホルモン不応癌などに試みられているが、その意義については確立していない。局所浸潤癌に対しては内分泌療法+前立腺全摘除術や内分泌療法+放射線療法の組み合わせも行われる。治療法の選択にあたっては、病期だけでなく年齢、合併疾患、ADL、治療の副作用なども考慮される。限局癌に対して、前立腺全摘除術と放射線療法の成績を直接比較したrandomized controlled studyはいまだなされておらず、手術の方が優れているのか両者は同等なのか結論は出ていない。日本では内分泌療法の施行される頻度が欧米に比べて高い。その内容はLH-RHアゴニストの皮下投与による薬物去勢をベースに場合により抗アンドロゲン剤の経口投与を併用するものである。内分泌療法は初回治療で90%以上の症例に奏効するが、進行癌ではホルモン不応癌に転化しやすく、このことが臨床上問題となっている。

前立腺癌はPSAによるスクリーニングが有用であり、PSA値が10 ng/ml未満の癌はほとんど限局癌である。したがって、50歳以上の男性は年1回のPSA測定が望ましい。

前立腺肥大症は高齢男性に起こる泌尿器科的QOL疾患の代表的なものであり、60歳以上の男性の3人に1人は罹患していると考えられる。一方、前立腺癌の頻度は肥大症のおよそ10分の1であるが、食生活の欧米化にともない年々増加しつつある。今講演において両疾患の概説を行う。

前立腺は、膀胱下方に位置し、その中心を尿道が貫通している。前立腺は性路の一部を形成し、分泌される前立腺液は精液の30%に相当する。前立腺重量は生後徐々に増大し、20~30歳をピーク(平均30gr)に、以後ゆるやかに減少する。しかし肥大症の場合は50歳頃より減少から増大に転じる。責任病変は内腺領域に発生する肥大結節であり、肥大結節そのものによる尿道の閉塞(機械的閉塞)と肥大結節内の平滑筋繊維に含まれるα1レセプターを介した結節の収縮による尿道の閉塞(機能的閉塞)により排尿症状(排尿開始遅延、尿勢低下、排尿時間延長、尿切れ不良など)が出現する。また、尿道閉塞による膀胱への過負荷や加齢が膀胱の無抑制収縮を惹起し、蓄尿症状(頻尿、切迫尿意、残尿感など)の原因となる。前立腺肥大症の診断にあたって、問診票(国際前立腺症状問診票とQOL問診票)により自覚症状の程度評価、尿流動態検査により尿勢と残尿量の計測、直腸指診とUSにより前立腺の大きさの評価がなされる。前立腺癌との鑑別に血中PSA(前立腺抗原)値の測定が重要である。前立腺肥大症診療ガイドラインでは問診票の症状スコア、QOLスコア、尿勢と残尿量、USによる前立腺体積の4項目でそれぞれ軽症、中等症、重症に分類され、さらに総合重症度判定がなされる。重症度を参考に肥大症の治療法が選択されるが、当然、患者の年齢や合併疾患、ADL、社会的要因も考慮する。治療法として、@無治療経過観察、A薬物療法、B低侵襲治療、C手術、Dカテーテル留置がある。@は症状スコアで軽症が対象となり、生活指導を行う。Aは総合重症度が軽〜中等症に良い適応であり、現在α1ブロッカーが標準薬物である。副作用としてめまいや立ちくらみがある。Bは総合重症度で中等~重症が対象となり、レーザーやマイクロ波による高温度治療や尿道ステント留置術がある。Cは重症患者、尿閉を繰り返す患者、膀胱結石合併例に適応となる。経尿道的前立腺切除術が標準手術である。Dは尿閉時の緊急処置などに用いられる。手術は最も侵襲性が高いが、最も有用性が高い。現時点で治療のgold standardである。

非専門医が50歳以上の排尿障害を訴える男性を診る場合、まず、問診票、PSA測定、USによる残尿測定を行い、問診票で重症、PSA4.0 ng/ml以上、残尿量が100ml以上のいずれかの場合は専門医への紹介が望ましい。それ以外の場合は、α1ブロッカーを投与し、12週目に再評価を行う。症状改善が乏しい場合は専門医へ紹介する。治療が良好なら、そのまま継続あるいは間欠投与を考慮する。α1ブロッカーは肥大腺腫を退縮させる効果を持たないため、肥大症が根治することはない。比較的若年より内服を開始した場合、効果を維持するために長期間服用することになる。期待余命を考慮し、低侵襲治療や現時点で最も根治性が期待できる手術も視野にいれるべきである。

前立腺癌は50歳頃から発生のリスクが高くなる。前立腺癌に特異的な症状はなく、基本的には前立腺肥大症と同様である。発生母地は主に外腺領域である。診断は直腸指診、血中PSA値測定、USMRIで行われるが、最終的には前立腺針生検による組織診断が必要である。早期癌の検出にはPSAが最も優れている。治療として@無治療経過観察、A前立腺全摘除術、B放射線療法、C内分泌療法、D化学療法がある。@は偶発で悪性度の低い場合やきわめて高齢者の場合、Aは75歳以下の前立腺限局癌、Bは前立腺限局癌、Cは局所浸潤癌、有転移癌や高齢者の前立腺限局癌に適応となる。Dはホルモン不応癌などに試みられているが、その意義については確立していない。局所浸潤癌に対しては内分泌療法+前立腺全摘除術や内分泌療法+放射線療法の組み合わせも行われる。治療法の選択にあたっては、病期だけでなく年齢、合併疾患、ADL、治療の副作用なども考慮される。限局癌に対して、前立腺全摘除術と放射線療法の成績を直接比較したrandomized controlled studyはいまだなされておらず、手術の方が優れているのか両者は同等なのか結論は出ていない。日本では内分泌療法の施行される頻度が欧米に比べて高い。その内容はLH-RHアゴニストの皮下投与による薬物去勢をベースに場合により抗アンドロゲン剤の経口投与を併用するものである。内分泌療法は初回治療で90%以上の症例に奏効するが、進行癌ではホルモン不応癌に転化しやすく、このことが臨床上問題となっている。

前立腺癌はPSAによるスクリーニングが有用であり、PSA値が10 ng/ml未満の癌はほとんど限局癌である。したがって、50歳以上の男性は年1回のPSA測定が望ましい。

前立腺肥大症は高齢男性に起こる泌尿器科的QOL疾患の代表的なものであり、60歳以上の男性の3人に1人は罹患していると考えられる。一方、前立腺癌の頻度は肥大症のおよそ10分の1であるが、食生活の欧米化にともない年々増加しつつある。今講演において両疾患の概説を行う。

前立腺は、膀胱下方に位置し、その中心を尿道が貫通している。前立腺は性路の一部を形成し、分泌される前立腺液は精液の30%に相当する。前立腺重量は生後徐々に増大し、20~30歳をピーク(平均30gr)に、以後ゆるやかに減少する。しかし肥大症の場合は50歳頃より減少から増大に転じる。責任病変は内腺領域に発生する肥大結節であり、肥大結節そのものによる尿道の閉塞(機械的閉塞)と肥大結節内の平滑筋繊維に含まれるα1レセプターを介した結節の収縮による尿道の閉塞(機能的閉塞)により排尿症状(排尿開始遅延、尿勢低下、排尿時間延長、尿切れ不良など)が出現する。また、尿道閉塞による膀胱への過負荷や加齢が膀胱の無抑制収縮を惹起し、蓄尿症状(頻尿、切迫尿意、残尿感など)の原因となる。前立腺肥大症の診断にあたって、問診票(国際前立腺症状問診票とQOL問診票)により自覚症状の程度評価、尿流動態検査により尿勢と残尿量の計測、直腸指診とUSにより前立腺の大きさの評価がなされる。前立腺癌との鑑別に血中PSA(前立腺抗原)値の測定が重要である。前立腺肥大症診療ガイドラインでは問診票の症状スコア、QOLスコア、尿勢と残尿量、USによる前立腺体積の4項目でそれぞれ軽症、中等症、重症に分類され、さらに総合重症度判定がなされる。重症度を参考に肥大症の治療法が選択されるが、当然、患者の年齢や合併疾患、ADL、社会的要因も考慮する。治療法として、@無治療経過観察、A薬物療法、B低侵襲治療、C手術、Dカテーテル留置がある。@は症状スコアで軽症が対象となり、生活指導を行う。Aは総合重症度が軽〜中等症に良い適応であり、現在α1ブロッカーが標準薬物である。副作用としてめまいや立ちくらみがある。Bは総合重症度で中等~重症が対象となり、レーザーやマイクロ波による高温度治療や尿道ステント留置術がある。Cは重症患者、尿閉を繰り返す患者、膀胱結石合併例に適応となる。経尿道的前立腺切除術が標準手術である。Dは尿閉時の緊急処置などに用いられる。手術は最も侵襲性が高いが、最も有用性が高い。現時点で治療のgold standardである。

非専門医が50歳以上の排尿障害を訴える男性を診る場合、まず、問診票、PSA測定、USによる残尿測定を行い、問診票で重症、PSA4.0 ng/ml以上、残尿量が100ml以上のいずれかの場合は専門医への紹介が望ましい。それ以外の場合は、α1ブロッカーを投与し、12週目に再評価を行う。症状改善が乏しい場合は専門医へ紹介する。治療が良好なら、そのまま継続あるいは間欠投与を考慮する。α1ブロッカーは肥大腺腫を退縮させる効果を持たないため、肥大症が根治することはない。比較的若年より内服を開始した場合、効果を維持するために長期間服用することになる。期待余命を考慮し、低侵襲治療や現時点で最も根治性が期待できる手術も視野にいれるべきである。

前立腺癌は50歳頃から発生のリスクが高くなる。前立腺癌に特異的な症状はなく、基本的には前立腺肥大症と同様である。発生母地は主に外腺領域である。診断は直腸指診、血中PSA値測定、USMRIで行われるが、最終的には前立腺針生検による組織診断が必要である。早期癌の検出にはPSAが最も優れている。治療として@無治療経過観察、A前立腺全摘除術、B放射線療法、C内分泌療法、D化学療法がある。@は偶発で悪性度の低い場合やきわめて高齢者の場合、Aは75歳以下の前立腺限局癌、Bは前立腺限局癌、Cは局所浸潤癌、有転移癌や高齢者の前立腺限局癌に適応となる。Dはホルモン不応癌などに試みられているが、その意義については確立していない。局所浸潤癌に対しては内分泌療法+前立腺全摘除術や内分泌療法+放射線療法の組み合わせも行われる。治療法の選択にあたっては、病期だけでなく年齢、合併疾患、ADL、治療の副作用なども考慮される。限局癌に対して、前立腺全摘除術と放射線療法の成績を直接比較したrandomized controlled studyはいまだなされておらず、手術の方が優れているのか両者は同等なのか結論は出ていない。日本では内分泌療法の施行される頻度が欧米に比べて高い。その内容はLH-RHアゴニストの皮下投与による薬物去勢をベースに場合により抗アンドロゲン剤の経口投与を併用するものである。内分泌療法は初回治療で90%以上の症例に奏効するが、進行癌ではホルモン不応癌に転化しやすく、このことが臨床上問題となっている。

前立腺癌はPSAによるスクリーニングが有用であり、PSA値が10 ng/ml未満の癌はほとんど限局癌である。したがって、50歳以上の男性は年1回のPSA測定が望ましい。

前立腺肥大症は高齢男性に起こる泌尿器科的QOL疾患の代表的なものであり、60歳以上の男性の3人に1人は罹患していると考えられる。一方、前立腺癌の頻度は肥大症のおよそ10分の1であるが、食生活の欧米化にともない年々増加しつつある。今講演において両疾患の概説を行う。

前立腺は、膀胱下方に位置し、その中心を尿道が貫通している。前立腺は性路の一部を形成し、分泌される前立腺液は精液の30%に相当する。前立腺重量は生後徐々に増大し、20~30歳をピーク(平均30gr)に、以後ゆるやかに減少する。しかし肥大症の場合は50歳頃より減少から増大に転じる。責任病変は内腺領域に発生する肥大結節であり、肥大結節そのものによる尿道の閉塞(機械的閉塞)と肥大結節内の平滑筋繊維に含まれるα1レセプターを介した結節の収縮による尿道の閉塞(機能的閉塞)により排尿症状(排尿開始遅延、尿勢低下、排尿時間延長、尿切れ不良など)が出現する。また、尿道閉塞による膀胱への過負荷や加齢が膀胱の無抑制収縮を惹起し、蓄尿症状(頻尿、切迫尿意、残尿感など)の原因となる。前立腺肥大症の診断にあたって、問診票(国際前立腺症状問診票とQOL問診票)により自覚症状の程度評価、尿流動態検査により尿勢と残尿量の計測、直腸指診とUSにより前立腺の大きさの評価がなされる。前立腺癌との鑑別に血中PSA(前立腺抗原)値の測定が重要である。前立腺肥大症診療ガイドラインでは問診票の症状スコア、QOLスコア、尿勢と残尿量、USによる前立腺体積の4項目でそれぞれ軽症、中等症、重症に分類され、さらに総合重症度判定がなされる。重症度を参考に肥大症の治療法が選択されるが、当然、患者の年齢や合併疾患、ADL、社会的要因も考慮する。治療法として、@無治療経過観察、A薬物療法、B低侵襲治療、C手術、Dカテーテル留置がある。@は症状スコアで軽症が対象となり、生活指導を行う。Aは総合重症度が軽〜中等症に良い適応であり、現在α1ブロッカーが標準薬物である。副作用としてめまいや立ちくらみがある。Bは総合重症度で中等~重症が対象となり、レーザーやマイクロ波による高温度治療や尿道ステント留置術がある。Cは重症患者、尿閉を繰り返す患者、膀胱結石合併例に適応となる。経尿道的前立腺切除術が標準手術である。Dは尿閉時の緊急処置などに用いられる。手術は最も侵襲性が高いが、最も有用性が高い。現時点で治療のgold standardである。

非専門医が50歳以上の排尿障害を訴える男性を診る場合、まず、問診票、PSA測定、USによる残尿測定を行い、問診票で重症、PSA4.0 ng/ml以上、残尿量が100ml以上のいずれかの場合は専門医への紹介が望ましい。それ以外の場合は、α1ブロッカーを投与し、12週目に再評価を行う。症状改善が乏しい場合は専門医へ紹介する。治療が良好なら、そのまま継続あるいは間欠投与を考慮する。α1ブロッカーは肥大腺腫を退縮させる効果を持たないため、肥大症が根治することはない。比較的若年より内服を開始した場合、効果を維持するために長期間服用することになる。期待余命を考慮し、低侵襲治療や現時点で最も根治性が期待できる手術も視野にいれるべきである。

前立腺癌は50歳頃から発生のリスクが高くなる。前立腺癌に特異的な症状はなく、基本的には前立腺肥大症と同様である。発生母地は主に外腺領域である。診断は直腸指診、血中PSA値測定、USMRIで行われるが、最終的には前立腺針生検による組織診断が必要である。早期癌の検出にはPSAが最も優れている。治療として@無治療経過観察、A前立腺全摘除術、B放射線療法、C内分泌療法、D化学療法がある。@は偶発で悪性度の低い場合やきわめて高齢者の場合、Aは75歳以下の前立腺限局癌、Bは前立腺限局癌、Cは局所浸潤癌、有転移癌や高齢者の前立腺限局癌に適応となる。Dはホルモン不応癌などに試みられているが、その意義については確立していない。局所浸潤癌に対しては内分泌療法+前立腺全摘除術や内分泌療法+放射線療法の組み合わせも行われる。治療法の選択にあたっては、病期だけでなく年齢、合併疾患、ADL、治療の副作用なども考慮される。限局癌に対して、前立腺全摘除術と放射線療法の成績を直接比較したrandomized controlled studyはいまだなされておらず、手術の方が優れているのか両者は同等なのか結論は出ていない。日本では内分泌療法の施行される頻度が欧米に比べて高い。その内容はLH-RHアゴニストの皮下投与による薬物去勢をベースに場合により抗アンドロゲン剤の経口投与を併用するものである。内分泌療法は初回治療で90%以上の症例に奏効するが、進行癌ではホルモン不応癌に転化しやすく、このことが臨床上問題となっている。

前立腺癌はPSAによるスクリーニングが有用であり、PSA値が10 ng/ml未満の癌はほとんど限局癌である。したがって、50歳以上の男性は年1回のPSA測定が望ましい。