睡眠時無呼吸症候群の診断と治療 −最近の知見も含めて−
奈良県立医科大学第2内科学講座 木村 弘、 福岡 篤彦
睡眠時無呼吸症候群(SAS)のほとんどは閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)で、いびきと睡眠時の呼吸停止を特徴とする疾患である。病態の基本は咽頭部の閉塞であり、その増悪には、咽頭開大筋群の機能低下と咽頭周囲の脂肪蓄積が問題となる。じゅうらい、欧米の肥満者に多い疾患とされ、肥満の少ない、または肥満度の小さい日本人には少ないとされていたが、様々な検討から日本人でも3%程度の有病率を示すことが示唆されつつあり、この値は欧米と大きな差はなく、commom disease であることが認識されつつある。また、動脈硬化を基礎として発症する高血圧や虚血性心疾患、脳血管障害がOSASに多く合併することが、Sleep Hear Health Study など大規模試験の結果からも明らかにされてきており、それらの予防対策としての、OSAS治療の重要性が増してきている。昨年発表されたJNC-7(米国高血圧学会の高血圧診療ガイドライン)でもSASは高血圧症の原因の一つに挙げられており、高血圧治療の立場からは二次性高血圧の原因疾患であることが示されている。診断には睡眠ポリソムノグラフ(PSG)が必要で、その診断にもまだ様々な問題点を残している。それは診断上必要なPSGの技術者が日本ではまだ少数でその養成も急ぐべき課題の一つとなっている。さらに治療に関しては、鼻シーパップ療法(nCPAP)が現在定着してきてはいるが、必要としている患者のまだ10%も治療されていない可能性がある。またSASは動脈硬化促進因子としての炎症性サイトカインや接着因子との関連も含めて今後さらに研究面においても発展の期待される分野であり、当科での取り組みも含めて紹介したい。