高血圧症の治療 −最近の話題− : 早朝高血圧とリスク管理

           奈良県立医科大学 総合医療学 藤本眞一

1.VALUE study について

 (The Valsartan Antihypertensive Long-Term Use Evaluation)

結果の要約

@ 両群ともに良好であったが、アムロジピン群で早期(投与1ヵ月後)から血圧コントロールに優れた。

A 心筋梗塞の発症は、アムロジピン群で有意に低かった。

B 脳卒中の発症は、アムロジピン群で低い傾向が見られた。

C 心不全、アムロジピン群とバルサルタン群に有意差はなかった。

D 総死亡は、アムロジピン群とバルサルタン群に有意差はなかった。

E 糖尿病の新規発症は、アムロジピン群が有意に高かった。

結論 

高血圧患者に対して、早期から確実に血圧コントロールすることは、心血管イベントの発症を抑制するのに重要であることが実証された。

2.日本高血圧学会2000のガイドライン: 早朝高血圧上昇を抑えるため、就寝前にドキサゾシンのように作用時間の長いα遮断薬の投与が効果的である。

3.JNC Z のガイドライン: 少量の利尿薬をベースに早期から、120/80を目標に十分な降圧を計る。

4.早朝高血圧

  心血管疾患のリスクファクターとしての早朝高血圧の意義について概説した。

5.メタボリックシンドロームの定義

@ 高 TG 血症≧150 mg/dL

A 低 HDL-C 血症 < 40 mg/dL(男性)、< 50mg/dL (女性)

B 糖代謝異常 : 空腹時血糖 ≧ 110mg/dL

C 高血圧 : ≧ 130 / 85 mmHg

D 内臓肥満 : 腹囲径男性 85cm、 女性 90cm 以上とする。

以上のうち 3つ そろうこと。

6.当科の成績 : 早朝高血圧に対するα1-blocker(Doxazosin) の効果を市街地と郊外(橿原市と黒滝村)で比較し、αブロッカー、doxazosin が早朝高血圧と交感神経活性に与える影響を検討した。  早朝高血圧に対するαブロッカー、doxazosin の投与は、交感神経活性を改善し早朝高血圧を改善する。交感神経活性は、都市部で山間部に比して高い。しかし、いずれの場合でも、αブロッカーは早朝高血圧を改善する。

7.講演のまとめ

@ VALUE試験から、早期に十分な降圧がリスク軽減に有用。

A JNCZから少量の利尿薬と降圧薬の組み合わせが有用であり、軽症から治療を開始し、十分に下げることが重要。

B メタボリックシンドロームの観点から、とにかくリスクを1つでも減らすことが肝要。

C カルデナリンの交感神経活性の抑制による早朝高血圧の治療について当科で検討中。