慢性期脳卒中の治療と予防

奈良県立医科大学 神経内科 川原 誠

 

 近年、脳卒中による死亡は減少傾向にあるが、それは主に脳出血の減少によるものであり、依然として脳梗塞の発症は高いレベルを推移しており、急激な高齢化社会を迎える上で深刻な影を投げかけている。特に後遺症による医療・介護費の増大は、財政面でも大きな負担となっており、今後脳卒中の一次・二次予防を有効に行うことが最優先課題である。

 日本人における脳卒中は欧米とはやや病型が異なるため、日本人のためのevidenceの集積が望まれてきた。今回は、日本の脳卒中のevidenceを重視して作成された脳卒中ガイドライン2004に沿って、慢性期脳卒中の治療と予防について概説した。予防については、まず第一に危険因子のコントロールが重要であり、危険因子として高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙・大量飲酒・非弁膜性心房細動などを取り上げた。特に高血圧の管理は脳卒中予防に非常に有効であり、脳循環を考慮した降圧薬の選択・降圧目標について指針を示した。次に、脳卒中予防における薬物療法について抗血小板薬・抗凝血薬・脳循環改善薬それぞれの作用機序・特徴・留意点について述べた。今後、臨床応用が期待されるclopidogrelximelagatranについても知見を紹介した。

 最後に、最近の画像診断の進歩により認められるようになった新たな病態について触れ、それぞれの脳卒中発症との関連について言及した。今後の脳卒中診療においては画像診断を駆使した病態把握が必須であり、脳卒中専門医との連携の重要性を強調した。