高齢化と糖尿病・高血圧罹患率の増加により腎不全による透析導入患者数は増加の一途をたどっており、医療経済にも深刻な影響を及ぼしている。また腎不全予備軍ともいえる慢性腎臓病(CKD)患者は、全国で約2千万人いる。したがって、腎臓内科医に与えられた最も重要な使命は腎疾患の進行阻止にある。約20年前の抗血小板療法などのわずかな選択肢しかなかった時代に比べると、ステロイド薬、免疫抑制薬、RAS blockade、低蛋白食、扁桃摘出など、現在では腎疾患の治療法も多様化し、適切な治療法の選択により、末期腎不全への進展を抑制することが可能になっている。実際に、PAS blockade を中心とした厳格な降圧療法と低蛋白食の導入などにより、血清クレアチニン値が 3 mg/dl 以下では、腎機能が悪化する症例は少数に限られる。しかし、腎臓病は治らないという先入観のためか、十分な保存療法が行われずに人工透析が導入されるケースが多いのが現状である。対策としては、腎臓内科専門医と開業医との連携の中で腎疾患患者を治療することが重要であると考えられる。そのためにも、われわれは腎疾患患者紹介システムを確立し、病診連携を通じて腎疾患進展阻止に努める必要があると考えている。また、末期腎不全に対する代替療法については、わが国においては血液透析療法が偏重され、腹膜透析は少なく、腎移植が著しく少ないという現状がある。患者の生命予後とQOLを考えると、腹膜透析の導入を積極的に行うことが求められる。
腎不全患者や透析患者の急増に伴い、腎臓内科医の果たすべき役割は益々大きくなっている。そこで、本レクチャーでは、1)腎疾患の現状、 2)腎臓内科医の治療法の概略、 3)慢性腎臓病(CKD)の概念、 4)腎疾患患者紹介システム、 について簡単に解説し、腎疾患治療のあり方について考えていきたい。