平成17年7月30日
アトピー性皮膚炎の治療戦略と患者指導
天理よろづ病院皮膚科・皮膚科部長  立花隆夫

 日本皮膚科学会では「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を2000年に発表、また、2003年と2004年に改訂版を発表することで適切と考えられる治療方針を提示すると共に、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療問題委員会による患者相談システムを設立することにより(http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med24/atopy/therapy.html)、本症に対する標準治療の普及と患者サービスの向上を心掛けている。

 一方、厚生労働省においても、厚生科学研究「アトピー性皮膚炎の既存治療法の適応と有効性の再評価に関する研究」の一貫として「アトピ一性皮膚炎治療ガイドライン」を1999年に発表(http://www.kyudai‐derm.org/atopy/atopy,html)、また、2001年と2002年に改訂すると共に、2002〜2004年度の「アトピー性皮膚炎の既存治療法の EBM による評価と有用な治療法の普及」による研究結果を基にした「アトピー性皮膚炎―よりよい治療のためのEvidence‐based Medicineとデ一タ集」を公開している(http://www.kyudai‐derm.org/atopy/atopy_ebm/index.html)。

 このような地道な努力により、以前みられたようなステロイド忌避の患者は少なくなりつつあるが、アトピ一ビジネスの終息には至っていないのも現状である。

 アトピー性皮膚炎に対する基本的な考え力は、まず正しい診断をし、その次に重症度を評価して、その後患者の症状に合わせた治療を行うことである。また、その治療は、薬物療法、スキンケア、並びに、原因悪化因子の検索と対策からなるが、患者によって原因・悪化因子は異なるので、個々の患者においてそれらを十分確認してから、必要と判断すれば除去対策を行う。さらには、本症のアレルギー性と非アレルギ一性の二面性を考慮しつつその一方に偏らないよう配慮することも肝要である。

 薬物療法においては、症状により非ステロイド外用剤を用いることはあるが、やはり主体はステロイド外用剤であり、部位や症状、病巣範囲、患者年齢、皮膚の状態などを考慮してクラスと剤型を決定するが、漫然と使用し続けるのではなく症状がおさまると漸減あるいはランクを下げるなどの配慮が必要である。また、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を用いてitch‐scratch cycle の悪循環を抑えることも大切である。

 異常な皮膚機能の補正を目的としたスキンケアは、ドライスキンを対象としている。また、それは皮膚最外層の角質の乾燥状態を反映している。角質の水分保有能には、毛嚢から分泌される皮脂、セラミドを主成分とする角質細胞間脂質、さらには天然保湿因子の 3つが関与しており、中でも後2者が重視されている。なお、このドライスキンすなわち乾燥肌の状態は、痒みを伴うことが多く掻破により皮膚炎を生じる。そのスキンケアとしてはまず保湿剤の外用を行うのが一般的であり、医療用の保湿剤以外にも市販されている。一般薬品や化粧品あるいは入浴剤の中にも保湿効果を有するものが多数販売されている。また、その他のスキンケアの方法として、洗浄剤は脱脂力の少ないものを用いる、洗顔は水かぬるま湯で行う、入浴の温度も低めを設定する、タオルやスポンジは柔らかいものを用いるなどが挙げられる。

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