平成18年11月25日 |
「排尿に関する最近の話題 ―過活動膀胱について― 」 |
天理よろづ相談所病院 泌尿器科 部長 奥村 和弘先生 |
これまで過活動膀胱は、ウロダイナミクス検査で診断される勝胱の不随意収縮によって定義されてきた.ところがこの定義は2002年に見直され、過活動膀胱は症状症候群として登場する事になった。 新しい定義によると、尿意切迫感を必須症状とし、通常これに頻尿(夜間頻尿)を伴い、切迫性尿失禁を伴う場合もあれば伴なわない場合もあるものが過活動膀胱である。このように自覚症状によって過活動膀胱が定義されたので、ウロダイナミクス検査を実施しなくとも症状に基づいて過活動膀胱を珍断できるようになった。 症状に基づく過活動膀胱診断において最も重要な点は、尿意切迫感という特殊な症状を問診から正確に把握する事である。尿意切迫感は正常人が感ずる最大尿意とは異なり、急に出現する我慢する事ができないほど強い尿意である。また過活動膀胱と類似の症状を有する疾患(膀胱炎、前立腺炎、膀胱癌等)を除外することも重要である。 過活動膀胱の患者数はきわめて多いといわれ、今後泌尿器科医のみならず一般医家による治療の機会が多くなる事が予測されている。このような背景から、過活動膀胱の診療ガイドラインが出版された。このガイドラインでは、過活動膀胱の疾患概念から珍断、治療に至るまでの事項につき解説し診療の指針を示してある。 過晴動膀胱には種々の治療法があるが、医療保険を考慮すると、現在のわが国では抗コリン薬による薬物療法が中心となる。一方、過活動膀胱の診断が症状に基づいて行われると、前立腺肥大焼に合併する過活動膀胱にも抗コリン薬がそのまま投与されてしまう事が危惧される.そこで、一般医家を対象として過活動膀胱の診療アルゴリズムが作成されている。ここには抗コリン薬による初期治療ができるだけ安全に行われるように配慮されており、尿所見と残尿に基づく診療指針が提示されている。 このように過活動膀胱は、むかしは専門家だけが診る特殊な疾患であったが、現在では症状による珍断が可能で、その患者数の多さから、今後、一般医家による珍療の機会がますます多くなり、プライマリケアの対象となる疾患である。ただ適正な珍療のためには、泌尿器科専門医と一般医が、それぞれの役割を認識しながら連携する事が重要である。 |
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