平成19年3月3日 |
C型肝炎の最新治療 − 肝癌の予防・ALT正常者への対応を含めて − |
奈良県立医科大学 消化器内分泌代謝内科 藤本正男 |
はじめに C型肝炎 1b高ウイルス症例に対しては2004年12月からペグインターフェロン、リバビリン併用投与が保険適応となった。これにより1b高ウイルス症例のSVR(ウイルス完全駆除)率は50-60%と飛躍的に向上している。1b高ウイルス症例に対しては週1回、48週間投与が標準治療であるが、これまでの治療成績では投与開始24週以内に血中HCV-RNAが陰性化しない場合、48週投与でSVRを得ること極めて困難である。また投与開始12週時点でHCVが陰性化しない場合も、48週投与でSVRとなる確率は低い。これらの症例については48週間の標準治療後も引き続きIFN投与を継続する等、さらなる対策が必要である。 なお2005年12月からは1b以外の高ウイルス症例および再治療例についてもペグインターフェロン、リバビリン併用投与が保険適応となり、1b高ウイルス症例以外については約90%の症例でSVRが得られている。 加齢は前述のとおり肝硬変への進展、肝癌発生の有意の危険因子である。実際IFN非反応例の肝硬変進展率をみると60才未満で4%/年に対して60才以上で7.5%/年と高齢層で有意に高率であり、また肝癌発生率についても60才未満2.5%/年に対しで60才以上5%/年と有意に高齢層で高率であった。高齢群では若年群に比して非SVR例が高率であったが、この一因として高齢層で白血球、血小板減少等の副作用がより生じやすく、IFN治療の継続が困難になることが挙げられる。また最近、高齢者のなかでも女性のSVR率が男性に比して低いことが指摘されるようになっている。近年IFN治療を希望する患者の高齢化も顕著となっており、高齢者に対する治療戦略は今後の大きな課題であろう。 IFN治療でSVRを期待しにくい症例や肝線維化進行例に対して、肝炎の沈静化あるいは肝発癌予防の目的でIFNの少量長期投与が推奨されている。2005年4月からはIFN自己注射も保険認可され、また2006年4月から1b高ウイルス以外の肝硬変症例についてフェロン(IFNβ製剤)の適応が拡大され予後の改善が期待されている。 最近ALTが基準値内にあるC型肝炎患者に対する治療が話題となっている。長期に観察するとこのような症例の大部分でALTは一過性、あるいは持続性高値を示し、肝線維化の進展を認める例が少なくない。種々の肝機能検査を参考に、できれば肝生検を行い線維化進展例を見逃すことなく抗ウイルス治療を行うことが肝要である。 このように近年IFN療法が積極的に施行されているが、数年先には新たな抗ウイルス薬としてプロテアーゼ阻害剤が使用可能となる見込みである。 抗ウイルス以外の治療として、グリチルリチン製剤、ウルソ製剤等の肝臓病薬も肝炎の沈静化には有効である。また、以前から飲酒が肝硬変、肝癌の促進因子であることが指摘されているほか、最近インスリン抵抗性と肝の脂肪沈着が抗ウイルス薬の効果に負に作用することが指摘されており、日常生活における禁酒、肥満の改善の指導も重要である。 C型肝炎発見を目的とした節目検診は開始後5年を経過し、毎年全国で全受診者の1%前後の抗体陽性者が発見されているが、検診の実効性を高めるための事後処理の体系化が今後の課題となっている。 肝細胞癌 肝癌の治療法としては近年ラジオ波焼灼療法(RFA)が保険認可され、外科的切除、肝動脈塞栓術(TACE)、エタノール注入療法(PEIT)等と並んで広く用いられている。また、当院では2005年3月から最新の定位放射線治療専用liniac装置(Novaris)が稼働しており、肝癌への応用が行われている。 まとめ |
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