〈はじめに〉
長崎在宅Dr.ネットは在宅医療に関心のある、有志の医師が集まり、医師が対応できないという理由で在宅に帰れない患者さんが帰れるようにするには、どの様にすればよいかという事から、このシステムを考えました。
その一方で、在宅医療に特化して頑張るのではなく、普通に診療所で外来診療を行っている医師が、無理なく在宅医療をできるようなシステムを目指しています。特定の人が、献身的に二十四時間燃え尽きるまで頑張るのではなく、在宅医療で重症の方でも普通の診療所の医師が少し頑張れば継続できまた、多くの医師が参加出来る事を目指しています。
〈長崎在宅Dr.ネットの考え〉
1.「在宅医療を希望する方が、医師が対応できないという理由で自宅に帰れな
い事がないようにする」・・・二十四時間三六五日の対応
2.「自宅で療養できるだけでなく、入院中に受けたのと同様の医療を在宅でも
受けられる事を目指す」・・・研修会・勉強会の実践
3.「医療・介護・福祉等と連携し、最適な在宅医療を提供する」・・・在宅ネ
ットワークの構築
1に関しては、少なくともこれ位の意気込みがある仲間を集めたいと考えています。
〈在宅療養を希望する患者さんを、多く受け入れるためには?〉
グループ診療のシステムを作る事で解決できると考えました。
(在宅医療に特化した診療所でなく外来併用型診療所として対応するために)
具体的には在宅医療を単独で行うのではなく、有志の医師が集まり、診診連携(つまり主治医・副主治医制)・病診連携を通じてのグループ診療を行う。結果として病院・患者さんにとっては在宅医療の受け皿となり、開業医にとっては相互協力により個々の医師の負担を軽減する事が可能と考えました。
大事な事は患者さん側にとって常に安心して訪問診療を依頼できるシステムを構築する事を目指しました。(二十四時間三六五日対応の実践)
〈Dr.ネットの発足と参加医師〉
1. 主に長崎市内で在宅医療に熱心な医師(十三名)を集め「長崎在宅Dr.ネットを発足。・・・平成十五年三月
2. 参加医師(連携医)の条件@二十四時間三六五日対応可能(対応する意欲がある事)A電子メールでの連携可能 である事。
Dr.ネットのメンバー構成を以下の様に規定しました
(1) 連携医・・訪問診療に関わる(原則として複数の主治医・副主治医制)
(2) 協力医・・専門性を持ち、必要に応じて往診を行う(眼科、皮膚科、精神科など)
(3) 病院医師・・病身連携に関わり、専門的な相談に応じる
*在宅療養支援診療所の届け出状況(全国的にはなかなか対応できていません)
長崎在宅Dr.ネット八一%(全国平均約十%、長崎市約十八%)
〈Dr.ネットのシステム・・在宅への受け入れの実際〉
1. 患者さんの紹介から主治医の決定(二日以内を目標)
Dr.ネット事務局またはDr.ネット会員へ患者さんの紹介
↓
Dr.ネットのメール上で主治医を公募
↓
コーディネータが中心となって主治医・副主治医を決定
2. 主治医の決定から在宅まで
退院前カンファレンス(退院一週間前までを目標)
↓
ケアプランの作成、自宅の受け入れ体制の整備
↓
在宅開始時、主治医・副主治医で自宅訪問(全て関係者の緊急連絡先のリスト作成)
3. 在宅での訪問診療
主治医・・・定期的に訪問診療
副主治医・・必要に応じた往診と主治医不在時のバックアップ
協力医・・・ネット上での相談に応じ、必要時には往診
病院医師・・診療上の相談に応じ、再入院等への対応
〈長崎在宅Dr.ネットの実績〉
〇Dr.ネットの在宅への受け入れは約四年間で一二四例(平成十九年二月末現在)
〇一一五例中三六例(三二%)が生存、七九例(六八%)が死亡
〇死亡例七九例中二六例(三七%)が在宅死
〇在宅死での平均在宅日数五八日
* 在宅への受け皿として充分に機能している
* Dr.ネットシステムの広がり
長崎県下でも複数のDr.ネット開設(大村市、諫早市)し稼動中。
長崎在宅Dr.ネットは長崎に於いては、在宅を支えるシステムとして順調に機能しています。然しながら、このシステムがどの地域でもうまく機能するとは言えません。在宅のネットワーク構築を考える時、どの広さの地域を支えるか、またその地域の特異性(医療、介護、福祉を巡る環境や土地柄など)はどの様なものかを考慮してその地域に適切なネットワークの構築が必要と考えます。全国には在宅医療を支えるための様々な試み、ネットワークが作られていますが、長崎在宅Dr.ネットがひとつのモデルとして他地域でのネットワーク作りに少しでもお役に立てれば良いと考えます。
追加資料
平成十九年九月末現在での会員数
連携医 六五名
協力医 二七名
病院医師 二九名
計 一二一名
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