平成20年9月27日
「食物アレルギー」
天理よろづ相談所病院 小児科部長 南部 光彦先生
 食物アレルギーとは、原因食物を摂取した後に、免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象を言います。毒性物質による反応と免疫学的機序を介さない現象(食物不耐症や仮性アレルゲンによる反応)を鑑別する必要があります。
 食物アレルギーの症状としては、皮膚・粘膜の症状、呼吸器症状、消化器症状があります。重症ではアナフィラキシーショックが起こります。多くの食物アレルギーではIgE抗体による即時型反応を示します。
 原因となる食品は、@鶏卵、A乳製品、B小麦です。年長児では甲殻類が上位に入っています。原因食物の診断には、血液検査(IgE、ヒスタミン遊離試験)、皮膚テスト、食物除去試験を参考にしますが、もっとも重要なのは食物負荷試験です。 
 治療は除去食療法と薬物療法があります。除去食療法とは、原因となっている食物を食べさせない方法です。薬物では、クロモグリク酸ナトリウムや抗ヒスタミン薬を使用します。
 重篤な症状としてアナフィラキシーショックがありますが、食物アレルギーでも年に数人が亡くなっておられます。自己注射用のアドレナリンである「エペピン」が使用可能です。 
 食物アレルギーの特殊なものとして、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがあります。小麦や甲殻類、くだものや野菜を食べた後に、運動した時にだけアナフィラキシーが出現するものです。
 また口腔アレルギー症候群といって、くだものや野菜を食べた時に口の症状が現れます。花粉に対してIgEを産生し、そのIgEが、花粉と共通した成分を有しているくだものや野菜とも交差反応する場合に、症状が出現します。
 アレルギーの子どもに対する学校での対応策として、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が財団法人学校保健会から出版されました。食物アレルギーやアナフィラキシーだけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎についてもまとめられています。ぜひ、ご活用ください。


   



このページのトップに戻る
定例講演会の目次のページに戻る
天理地区医師会のトップページに戻る