平成21年3月28日 |
「ウイルス肝炎疾患の現状―本当は怖いB型肝炎―」 |
天理よろづ相談所病院 消化器内科内視鏡部長 中村 武史先生 |
最近問題になっているB型肝炎に関する以下の問題を概説し、具体的な対処法について述べたい。 (1)従来、B型肝炎はHBeAg陰性、HBeAb陽性となると炎症が消退し、肝硬変、肝癌には進行しないと考えられていた。しかし、HBeAg陰性、HBeAb陽性で肝炎が血液生化学的にも組織学的にもほとんどない例で肝癌が発生し巨大となるまで診断されないケースが見られる。これはB型肝炎とC型肝炎の発癌メカニズムが異なっていたためと考えらる。 (2)骨髄移植後に免疫抑制状態になるとHBeAg陰性、HBeAb陽性患者のHBvirus(HBV)が再活性化、増殖し重症肝炎になることは比較的知られている。しかし、HBsAg陰性HBsAb陽性患者でもHBVの再活性化、抗原抗体の逆転が起こりうる。この病態はde novo肝炎と言われてきわめて重篤で重症肝炎をきたし致死的となることがある。また、最近多方面で使用され始めた生物活性物質もまれながら、HBV reactivationをきたす例が報告されている。 (3)従来のB型肝炎はほとんどが母子感染によるキャリアからの発症であったが、最近性行為感染による急性肝炎が増加している。この肝炎ウイルスには日本に多い遺伝子型を持つ肝炎ウイルスも多いが、海外から移入されたと思われる遺伝子型を持つものが増加しており、臨床的に対応が複雑で難しくなっている。 最後に昨年から始まった「肝炎対策促進事業」以降の当院のC型肝炎に対するIFN治療の現状について簡単に述べた。 |
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