平成21年10月31日 |
「IBSの今日の動向と日常臨床での対応」 |
江川内科消化器科医院 院長 江川 信一先生 |
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)とは器質的疾患を伴わず、腹痛・腹部不快感と便通異常(下痢、便秘)を主体とし、それら消化器症状が長期間持続もしくは悪化・改善を繰り返す機能性疾患と定義されている。 RomeVの機能性消化管障害分類(下記)ではC1にあたる。 C 機能性腸障害 C1 過敏性腸症候群 irritable bowel syndrome C2 機能性膨満 functional bloating C3 機能性便秘 functional constipation C4 機能性下痢 functional diarrhea C5 非特異性機能性腸障害 unspecified functional bowel disorder D 機能性腹痛症候群 functional abdominal pain syndrome 日本人のIBS有病率一二・五%、内訳は受診率二二%であり、non patient IBS 九・七五% IBS患者二・七五%、IBSは慢性疾患であり、これは少ない頻度とは言えない。 診断は表1を参照。 鑑別すべき疾患としては下記のようなものが挙げられる。 炎症性腸疾患(IBD)・・潰瘍性大腸炎、クローン病 悪性腫瘍・・大腸癌など 内分泌疾患・・甲状腺機能亢進症、糖尿病による抹消神経障害など 感染症 婦人科疾患・・子宮内膜症、月経困難症など 精神疾患 吸収不良・・慢性膵炎、胃の切除後など 慢性便秘症 食事性下痢・・乳糖不耐症、アルコール、高脂肪食など 特殊な疾患・・collagenous colitis,colonic inertia amyloidosis 治療に関しては表2を参照 IBSのプラセボ効果は三〇%前後もある。(Prather T, et al) このことはIBS発症に関してストレスや不安などの心理的要素の関連が強いことを示唆している。従ってIBSの治療にあたっては患者に各種検査で器質的異常が認められなかったことを報告し、IBSの病態を説明、さらに生命予後の悪化がないことを理解させ患者の不安を取り除き良好な医師―患者関係を築くことが重要であると考える。その上で投薬、食事療法、生活指導を行うことが肝要である。 |
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