平成22年2月27日
「インフルエンザ肺炎・細菌性肺炎」
天理よろづ相談所病院 感染症管理センター長 田中 栄作先生
二〇〇九年四月、メキシコで発生したブタ由来の新型インフルエンザH1N1は、二〇〇九年五月には、わが国にも広がり、大きな問題となりました。その後、二〇〇九年十一月の第四週を境に患者数は急速に減少し、二〇一〇年二月には警報が解除され、パンデミックの第一波は終息を迎えたようです。
国立感染症研究所のサーベイランスによれば、十二月中旬迄に国民の八人に一人がインフルエンザで医療機関を受診したと推定され、受診者の一三〇〇人に一人が入院し、入院患者の一六人に一人が重症化し、受診者の十三万人に一人が死亡したものと推計されています。インフルエンザ肺炎、インフルエンザ脳炎等による入院患者、死亡者の割合は、米国やオーストラリアからの報告と比べて低いものとなっています。今シーズンの当院におけるインフルエンザ肺炎入院患者も、十人程度であり、市中肺炎の起炎菌の中で、最大の頻度を占めた病原体は、やはり肺炎球菌でした。
インフルエンザ肺炎は、インフルエンザウイルスによる原発性、インフルエンザ罹患後に続発する細菌による二次性、インフルエンザと細菌の混合性の三種の病型に分類されます。臨床症状からインフルエンザを疑った場合、まず抗原検査を行い、呼吸困難あるいはSpO2の低下があれば、胸部レントゲン検査を施行し、診断します。画像所見は、さまざまで特異性に乏しく、たとえ胸部CT検査を施行しても、他の間質性肺炎や薬剤性肺炎などの彌慢性肺疾患と鑑別することは不可能であり、鑑別診断には役立ちません。あくまで、症状等から総合的に診断することが重要です。







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