平成22年9月25日
「高血圧と慢性腎臓病(特に腎硬化症について)」
大阪医科大学 内科学V教室 大阪医科大学付属病院腎臓内科 森 龍彦先生
 高血圧は日常の診療で最も多く遭遇する疾患のひとつで現在約三五〇〇万人、すなわち国民の約四人に一人が高血圧に罹患していることになります。血圧が高いと総死亡率が上昇します。高血圧が予後に悪影響を与えるのは年齢によらず示されています。この事実にもかかわらず、血圧コントロールが特に若年者において十分行われていないのが事実です。現在糖尿病性腎症が透析導入原疾患の第一位ですが、高血圧に伴う腎硬化症は、糖尿病性腎症に比べると頻度は低いものの、透析導入原疾患の一〇%をも占め、さらには年々増加しております。種々の降圧薬が使え、血圧のコントロールは以前より容易と考えられるのに、この増加は驚きです。腎硬化症は、動脈硬化性病変に基づく血行障害により、糸球体、尿細管の委縮、間質の増生をきたし、腎が硬化した状態で、腎機能低下を進展させます。中程度以上腎機能が低下(CKDstage3以上)は、正常〜軽度腎機能低下に比し心血管イベントのみならず、死亡率が上昇することが報告され、末期腎不全、すなわち透析患者での心血管病による死亡率は、一般集団に比し、一〇〜二〇倍高いことが報告されています。このイベント発生にも高血圧が関与しています。心血管病と慢性腎臓病が相互に悪影響を及ぼすことは心腎連関として知られています。CKD治療ガイド2009では、腎硬化症の腎機能障害の進展抑制のためには、130/80mmHg未満の十分な降圧が推奨され、顕性蛋白尿を伴う患者には降圧薬としてACE阻害薬もしくはARBが推奨されています。ちょっと高い血圧、症状が無いから放置されることがありますが、腎障害を経て生命予後に影響を及ぼす可能性を秘めています。これらにどう対応してゆくのかをお話しさせていただきます。最近使用することが可能になったレニン阻害薬(DRI)の、期待される腎保護効果についてもお話ししたいと思います。








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