令和1年6月29日 |
「慢性便秘の治療」 |
社会医療法人健生会 生駒胃腸科肛門科診療所 所長 増田 勉先生 |
便秘の症状は個人差があり、定量化・定性化が困難な指標の集合体である。 また、便秘型過敏性腸症候群とオーバーラップしていることがあり、注意を要する。実臨床では厳密な両者の鑑別は必要なく、早期に患者さんの症状を改善させてあげることが肝要である。 慢性便秘の治療は、便を肛門まで運んでくる各種内服薬治療と、肛門から便を排出させるレシカルボン坐薬治療に分けられる。 最近新しい便秘治療薬が次々と登場し、その使い分けが問題となる。 便秘治療を行う時の考慮すべきファクターとして、便秘歴(強度の便秘かどうか)、刺激性下剤の使用歴(使用歴が長いと手強い便秘)、困窮度(直ぐにでも便が出るようにしてあげる必要性)、年齢(高齢の方は便失禁に注意)、基礎疾患・常用薬(難治性便秘の原因となりうる)等が挙げられる。 当診療所では既に緩下剤を服用しており、便秘歴の長い頑固な便秘の方が多いので強力なリンゼスを第一選択薬として処方することが多い。腹痛や腹満等の過敏性腸症候群の症状を有する便秘症例も、リンゼスが第一選択薬となる。 軽い、あるいは便秘歴の短い方には浸透圧下剤や、アミティーザ12μgを第一選択薬として処方することが多い。 以下に当診療所で行ったリンゼスに対するアンケート結果を記す。 対象は、当診療所で平成29年3月1日から平成30年2月28日までの間に便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)と診断されてリンゼスが処方され、アンケートが得られた26例(以下IBS-c群)及び同期間に慢性便秘症と診断されてリンゼスが処方され、アンケートが得られた34例(以下慢性便秘症群)。リンゼス服用後2週、4週、3カ月、6カ月、1年の時点で有効性を評価した。評価項目は、ブリストルスケール、排便頻度、排便時の怒責、排便後の残便感、腹痛、腹部膨満感、腹鳴とし、ブリストルスケール以外はそれぞれの症状の程度を強い、弱い、ほとんど無いの3段階に分けて評価した。 結果は、リンゼス投与前後における改善具合を比較すると、IBS-c群、慢性便秘症群共に、上記全ての項目に関してそれぞれ経時的に改善していた。 便秘治療とは一人一人の患者さんの症状改善に適したお薬を、その種類、投与量、投与頻度等の調節をしながら、よりbetterな排便を目指して、患者さんと共に“調整”していく作業である。 |
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