令和1年9月28日
「在宅でしか、在宅だからできる栄養療法」
             〜訪問管理栄養士の視点〜
医療法人悠明会 在宅支援いむらクリニック 管理栄養士 藤村 真依先生
高齢者にとっての食欲不振、食事量の減少は、体重減少、体力免疫力の低下、フレイルやサルコペニア、身体ADLの低下につながり、要介護度を上げる入り口となることが多くみられます。
食事量の減少は、心因性のもの、痛み、抗がん剤投与等などからの食思不振、歯の不具合、上部消化管閉塞、神経難病、脳梗塞後遺症など摂食嚥下障害による摂取量の低下などがあります。しかし、在宅においては、疾患や高齢者特有の身体的変化以外の要因で栄養不足、栄養制限がうまくいかないことも多く見られることです。
意欲や体力の低下は、食事の準備能力の低下、買い物困難につながり、それは生鮮食品の使用頻度の低下、食事の簡素、単一化の傾向につながります。認知症では、比較的初期の段階より調理能力の低下や食事バランスに対する思考力の低下が見られます。さらに、一人暮らしによる孤食は、食に対する興味の低下を招きます。
それらの対応として、まずは適切な栄養アセスメントを実施し、それに基づき個々の疾患や生活状況に応じた栄養療法が必要です。特に高齢者では、社会資源の活用、少量で栄養を確保できる手段として、食品の選択や調理の工夫と同時に経腸栄養剤、栄養補助食品を効率的に使用することが不可欠となります。
病気や、高齢になると、食べることがともすれば、「生きるため」になってしまうことがあります。人にとって、いつでも、いつまでも、食べることは体の栄養とともに心の栄養であり、「生きる楽しみ」であって欲しい。訪問管理栄養士としては、食を「栄養」という側面からだけでなく「生活の質・生きる楽しみ」という面から支えていくことも在宅だからできる栄養療法の一つではないかと考えています。


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