平成24年8月4日 |
「2型糖尿病における血糖、血圧、脂質lコントロールと合併症・・ 天理コホートスタディ(DDCRT:Diabetes Distress and Complication Registry at Tenri)から」 |
公益財団法人天理よろづ相談所病院 副院長 石井 均先生 |
■糖尿病治療の目標 糖尿病治療の目標は、「細小血管障害および大血管障害(動脈硬化性疾患)の発症並びに進展の防止を通じて、糖尿病患者のquality of life(QOL:生活の質)を維持し、寿命を延ばす」ことである。このことは日本糖尿病学会編の糖尿病治療ガイドに明示されている。 それでは、細小血管障害および大血管障害(動脈硬化性疾患)の発症並びに進展の防止のためにはどのような要因をコントロールしていく必要があるかということが問題になるが、それには「血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状態の維持」が必要である。すなわち、糖尿病の管理は単に血糖管理だけでよいとは言えず、体重、血圧、血清脂質などの危険因子を十分に管理する必要がある。とくに大血管障害(動脈硬化性疾患)については血圧や血清脂質の影響が大きい。 ■そのためのコントロール指標 「血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状態の維持」の指標として、糖尿病学会は以下の基準を設けている。 血糖(NGSP表示) 優・・六・二%未満 良・・六・二〜六・九%未満 血圧 一三〇未満/八〇未満 一二五未満/七五未満(蛋白尿一g/日以上) 脂質 LDLコレステロール 一二〇mg/dl未満 LDLコレステロール 一〇〇mg/dl未満(冠動脈疾患あり) 体重 BMI 二二付近 それぞれの指標は多くの臨床試験の結果を参考に設定されている。 ■天理コホートスタディ(DDCRT:Diabetes Distress and Complication Registry at Tenri) 天理よろづ相談所病院内分泌内科は二〇〇九年一〇月より通院中の全糖尿病患者のうち同意の得られた約四〇〇〇人を対象としたコホートスタディを開始した。基本診察データ(体重、血圧など)、治療法データ、検査データ、などを集積するとともに、アウトカム調査(網膜症、虚血性心疾患、脳卒中、癌、死亡など)を行い、その管連を追跡している。また、治療満足度、QOL調査などPRO(Patient Reported Outcome)についても調査している。 ■天理コホートスタディにおけるコントロール指標達成率 今回初年度調査における上気コントロール指標達成率を算出した。2型糖尿病患者三二九五人について、平均HbA1c(NGSP)七・四%、平均収縮期血圧一三二mmHg、平均拡張期血圧七四mmHg、平均LDLコレステロール一一二mg/dl、平均BMI二四・四であった。基準から最も離れていたのはBMIであり、血圧、LDLコレステロールについてはかなり良好と考えられた。 しかしながら、厳格に指標通りの達成率を求めると、HbA1c六・九%未満(NGSP)三六・三%、血圧(全体)三一・四%、LDLコレステロール(全体)五六・二%であり、必ずしも十分とは言えなかった。 本施設の2型糖尿病患者の平均年齢は六五・一歳であり、各種コントロール指標をすべての患者に適用すべきかについては議論のあるところだが、これらの初年度結果の合併症進展への影響について今後解析を進めていきたいと考えている。 |
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