平成25年9月28日
「パーキンソン病の診断と治療」
公益財団法人天理よろづ相談所病院 神経内科部長 末永 敏彦先生
 


 パーキンソン病は、安静時振戦、筋固縮、動作緩慢、姿勢反射障害といった運動症状を呈する疾患で、日本では人口一〇万人あたり一〇〇〜一五〇名の患者数があると考えられている。初期には症状に左右差があることが特徴である。
 近年パーキンソン病では運動症状に加えて、非運動症状を呈することが注目されてきている。非運動症状には、抑うつ、便秘、嗅覚障害、レム睡眠行動障害などが含まれる。特にこれらの非運動症状は、パーキンソン病の運動症状が出現する前より認められることが知られてきた。
 レム睡眠行動障害では、夜中に鮮明な夢(追われている、戦うなどの不快な夢が多い)を見、夢の内容に合わせて、無意識に激しく身体を動かしたり、はっきりとした寝言を言うことがある。また、パーキンソン病で嗅覚障害のある場合、将来認知症になる可能性が高いことも知られている。
 パーキンソン病の診断は、神経診察で行ってきた。頭部CTやMRIといった画像診断ではパーキンソン病は特徴的な異常は呈さず、画像検査は他のパーキンソン症候群を鑑別するために施行される。パーキンソン症候群に含まれる多系統委縮症では、頭部MRIT2強調画像水平断で橋の横走線維の変性を示す十字サインがみられ、進行性核上性麻痺では頭部MRI矢状断で中脳被蓋の委縮を示唆するハチドリサインがみられる。一方、RI検査ではパーキンソン病の診断に有用な検査がある。MIBG心筋シンチでは、初期のパーキンソン病から異常所見を呈する。また、近々使用が可能になるDaT scanでは黒質線条体神経終末部を可視化でき、パーキンソン病の黒質神経細胞の変性を調べることができる。パーキンソン病の治療薬であるエルドパを実際に一定量経口投与して、エルドパに対する反応を調べるエルドパチャレンジテストも診断には有用である。
 最後に、パーキンソン病の治療に関しては、近年ドパミン受容体をエルドパ製剤等で間歇的に刺激すると、ジスキネジア、ウェアリングオフ現象などの運動合併症を生じやすいことがわかってきた。パーキンソン病治療の今後の方向性として、間歇的なドパミン刺激よりも、持続的に刺激を行う治療法の開発を目指すことになる。特にドパミンアゴニストでは、徐放製剤、貼付剤などの剤形に工夫を凝らし、持続的なドパミン刺激が達成できるよう工夫されてきている。



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