平成25年11月30日
「食後高血糖に注目した糖尿病治療」
大阪済生会野江病院 副院長兼糖尿病・内分泌内科部長 安田 浩一朗先生
 


  近年血糖連続測定器などの普及に伴い糖尿病の血糖コントロールの指標として一般的に用いられてきた空腹時血糖値やHbA1cに加えて、食後血糖値や血糖値の振幅がちゅうもくされるようになりました。その背景には、HbA1cをより低くコントロールをしても明らかな心血管病変の減少が見られず、逆に体重増加や低血糖のリスク増大によるマイナス要因があることが大規模試験から示されたことにあります。加えて血糖変動と認知機能が関連することが発表されるなど。食後血糖値の重要性が多方面から指摘されるようになっています。
 今回の講演では、前半で近年2型糖尿病治療の中心となりつつあるDPP4阻害薬の作用機序から、食後血糖値のコントロールへの好影響、低血糖リスクの少なさ示し。その利点を活かすための併用薬の選択、特にαGI剤やグリニド薬との相性の良さやSU剤併用による重症低血糖症発生のメカニズム等を交えて考察いたしました。後半部分では特に高齢者の血糖コントロールにおけるインスリンの重要性を中心に、新しく登場した持効型インスリンの時効化の機序やその特性がもたらす利点、注意点について自験例を交えて解説いたしました。より早期のインスリン導入とサポート側の負担軽減を可能とし、夜間低血糖のリスク軽減を可能とする薬剤です。この持効型インスリンとインクレチン関連薬の併用により、多くの高齢者で食後血糖の改善と全体のコントロール改善の両者を低血糖リスクを上げずに実現できる可能性を提示いたしました。一方、導入早期の一過性高血糖やインスリン製剤間での力価の相違を考慮し切り替えや追加をする必要性をお示しし、より円滑なインスリン導入をお願いいたしました。

 講演終了後も多くの御意見をいただき活発なご議論していただきました。今回このような発表の機会を与えていただいた関係各位に心より御礼を申し上げます。天理地区医師会の方々のさらなるご活躍を心よりお祈りしております。


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