関節リウマチ(RA)は、持続する滑膜炎、全身性炎症、自己抗体(リウマチ因子/抗CCP抗体)を特徴とする疾患であり、罹患率は成人の〇・五から一・〇%、一年あたり五人から五〇人/一〇万人の発症がある。治療なしでは関節破壊、QOL低下、心血管疾患などの合併症を起こす。生命予後も不良な疾患であった。ここ一〇年の間にRAの診療に大きな変化が起こった。TNFα阻害剤を端緒とする生物学的製剤の治療への導入により、特に重篤なケースでの治療介入の選択肢が広がり、早期診断、疾患活動性を強力に抑制することが強調されるようになった。結果、治療戦略、疾患活動性評価基準、診断基準のすべてが書き換えられることになる。
こうしたリウマチ診療の進歩は、治療目標にも変化をもたらしている。かつてリウマチは、治療が難渋する例も多く、病気の治療・リハビリで手一杯なケースも多かったが、疾患のコントロールがつくようになり、関節予後・機能予後の改善が得られるようになり、さらに「元気に、長生きする」ことが目標となっている。リウマチの治療においては、関節炎/滑膜炎の制御のみでなく、間質性肺炎、アミロイドーシス、血管炎などの関節外症状や、疾患・治療に伴う合併症(感染症、悪性腫瘍、心血管合併症)にも目を向ける必要がある。
現在のリウマチ治療の鍵となる考え方は@早期介入・治療の重要性(Window of opportunity)A疾患活動性の強力な抑制 Tight Control(treat to target)、という点に要約される。こうした考え方を活かすために、@早期診断A疾患活動性の厳密な評価B寛解を目指した治療のこまめな修正、が必要となる。早期診断を可能とするべく、二〇一〇年には関節炎の分布と程度、炎症所見、血清学的因子(リウマチ因子、抗CCP抗体)などの要素をスコア化して診断する新たな基準が作成された。また疾患活動性を客観的に示すことができるように、自覚症状、診察所見、検査所見を複合して活動性を評価する指標(DAS28やSDAIなど)が導入された。さらに寛解をめざした治療のプロトコールが提唱され、ガイドラインとして示される他、「Treat to target」と呼ぶ治療指針が国際的に合意され、リウマチ治療の共通の指針として広く受け入れられている。
リウマチの治療の中心は薬物療法であり、@鎮痛剤、ステロイドADMARDsB生物学的製剤の三種に分類される。現在のリウマチの治療の主軸はDMARDsであり、診断後早期に導入することが推奨されている。中でもメソトレキセート(MTX)がアンカードラッグと呼ばれ、第一選択薬と位置づけられる。
生物学的製剤にはTNFα阻害薬、IL‐6阻害薬などがあり、MTXなどDMARDsの治療で寛解・低疾患活動性に至らないケースが基本的な適応であるが、予後因子不良・高疾患活動性ではさらに早期の使用も考慮される。現在日本で使用可能な生物学的製剤は七種類あり、投与経路、投与間隔、MTXの併用の可否などを考慮して選択されている。
リウマチ患者の予後を改善するためには、こうした疾患活動性の制御に加えて、RA患者に多い動脈硬化疾患の予防、感染症の予防と早期治療、消化管出血予防、などの全般的な管理も重要であり、かかりつけ医、リウマチ治療医、コメディカルがチームとして協力して疾患の治療にあたる考え方が大切であると考える。
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