平成26年9月27日
「脂肪酸代謝からみた糖尿病・インスリン抵抗性の病態と治療」
兵庫医科大学 内科学・糖尿病・内分泌・代謝科  小山英則先生
 

日本人の糖尿病有病率は一九五〇年以降、劇的に増加している。この主要な原因として注目されるのが脂肪摂取量の増加と自動車の普及による運動量低下と考えられている。この際、総カロリー摂取量は増加しておらず、栄養成分の中で脂肪酸摂取増加がいかに日本人糖尿病発症にインパクトがあるかが推測される。最近の研究で筋肉における糖の取り込み、インスリン感受性にミトコンドリア機能が深く関与することが明らかになってきた。すなわち、ミトコンドリア機能低下により脂肪酸代謝が障害され、中途の脂肪酸代謝物が細胞内に蓄積される。この脂肪酸代謝産物はProtein kinase Cなどの活性化を介して、インスリン情報伝達系を阻害する。ミトコンドリア機能障害に関与する三つの要因は@加齢、A遺伝、B脂肪酸摂取過多であり、いずれもインスリン抵抗性、糖尿病発症に深く関わることが知られている。
 カルニチンは主に筋肉・心筋などの脂肪酸代謝に必須な栄養素である。カルニチンは約二五%が生体で産生され(肝臓・腎臓)、残り七五%は経口摂取される。生体内では筋肉中に多く存在し、@脂肪酸をミトコンドリア内に運搬し、β酸化によりエネルギー産生にかかわる、Aミトコンドリア内の過剰・余剰なアシルCoAを細胞外に排出する、B過剰なアセチルCoAを排出することにより、糖酸化を促す、など骨格筋、心筋などの脂肪酸代謝、エネルギー産生調節に必須な働きをする。すなわち、過剰な脂肪酸に生体が暴露されると、過剰なアシルCoAへの対処の結果、カルニチンが相対的に欠乏することが想定されている。
 脂肪酸の過大な暴露と運動低下(ATP必要量低下)により、骨格筋・肝臓などでは脂肪酸代謝(β酸化)とATP必要量の不均衡がおこる。過剰な脂肪酸は、カルニチンの相対的な欠乏を引き起こし、ミトコンドリア内の過剰なアシルCoAが十分に細胞内に排出されず、ミトコンドリア機能低下をきたすことになる。さらにセラミド、ジアシルグリセロールなどの脂質代謝物の蓄積は、インスリンシグナルの阻害、インスリン抵抗性を引き起こす。最近の小規模な臨床試験では、カルニチン投与によるインスリン抵抗性改善効果が実際に示されている。




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