レビー小体型認知症は、パーキンソン病の剖検脳で黒質をはじめとする脳幹諸核の神経細胞内に認められるレビー小体が、大脳皮質にも広く出現することによって起こる認知症である。本邦では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と並び三大認知症のひとつに挙げられている。
近年パーキンソン病でも病状が進行すると効率に認知症を伴うことが知られている。レビー小体型認知症と認知症を伴うパーキンソン病の異同が問題になるが、原則パーキンソン症状の発現から認知症の出現までの期間が一年未満ならばレビー小体型認知症、一年以上ならば認知症を伴うパーキンソン病と診断する。
レビー小体型認知症の症状では、日常生活に支障をきたす認知機能障害を呈するが、アルツハイマー型認知症とは異なり、記憶障害が比較的軽いことが特徴である。記憶障害よりも、注意障害、視空間認知障害、実行機能障害が目立つことが多い。
中核症状として見逃してはいけないのが、繰り返し出現するありありとした人や小動物、虫などの幻視である。椅子が人に見えるといった錯視も多い。次に、症状が日替わり、または、一日の中でも時間により変動する、認知機能の動揺がみられる。また、筋固縮、寡動、安静時振戦というパーキンソン症状を伴うことがある。ただ、レビー小体型認知症でパーキンソン症状のない患者もかなりの数存在する。
夜中に大声を出すREM睡眠行動障害、少量の抗精神病薬で身体が極端に硬直するなどの強い副作用が出る抗精神病薬に対する過敏性も重要である。最近本邦でも施行可能となったDat Scanでは、線条体にある黒質神経細胞の軸索ターミナルの変性を可視化することができ、客観的に黒質線条体系の変性を調べることができる。
治療としては、最近塩酸ドネペジル投与により中核症状の進行抑制の期待が持たれている。幻視を抑える効果も期待されている。また、BPSDへの対応としては、抑肝散、少量のクエチアピン、アリピプラゾールなどが使用される。ただ、薬剤に対する過敏性を考慮して、少量からの投与を心がけてほしい。
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