平成28年1月30日
「C型肝炎・その周辺事項から治療まで」
天理よろづ相談所病院 消化器内科   岡野 明浩先生
 

日本での未治療のC型慢性肝炎患者は一二〇万人と推定されている。肝硬変への進展や肝細胞癌の発生の予防のためウイルスの排除が望まれる。本邦での
ジェノタイプ別の内訳は1b型が七〇%、2a型が二〇%、2b型が一〇%である。従来の治療法はいずれの型もペグインターフェロン+リバビリンをベースにした治療が中心であった。しかし、ウイルス排除率(SVR)は1型で約五〇%と不十分であり、また重い副作用(インフルエンザ様症状、血球減少、うつ等)があった。近年ではDAA(Direct Acting Antivirals)が開発され、ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビルまたはバニプレビルの3剤併用療法の登場によってSVRは1型で八〇%台までに改善した。しかしながらインターフェロンの副作用を回避するためにインターフェロンを必要としない経口剤のみの治療が望まれていた。二〇一四年にダクラタスビル+アスナプレビル経口2剤併用療法が、二〇一五年にソホスブビル+レジパスビル配合錠とオムビタスビル+パリタプレビル+リトナビル配合錠が1型に保険認可され、二〇一五年にソホスブビル+リバビリン併用療法が2型に認可された。いずれもSVRは九〇%〜一〇〇%と極めて高い一方で副作用は軽微なものに限られている。そのため高齢者、代償性肝硬変患者、インターフェロン不適格、不耐容、不応例にも使用可能であり、インターフェロン治療に比べて適応が広がった。夢のインターフェロンフリー治療の幕開けの時代となった現在であるが、この経口剤治療にも薬剤耐性、適応年齢、医療費(公費)、SVR後の肝発癌、患者の掘り起し、等の課題が残されている。日本肝臓学会ガイドライン、当院の治療データを示して新しいC型肝炎治療について概説する。



 







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