平成28年3月28日
「慢性腎臓病(CKD)における多発性嚢胞腎の位置づけ」
近畿大学医学部奈良病院 腎臓内科 講師   美馬 晶先生
 

常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は両側腎臓に多数の嚢胞が進行性に発生、増大し、腎臓以外の種々の臓器にも障害が生じる最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患です。加齢とともに嚢胞が両腎に増加、進行性に腎機能が低下し、七〇歳までに約半数が末期腎不全に至ります。遺伝形式は常染色体優性遺伝であり、男女ともに発症します。両親が本疾患に罹患していなくても、新たな突然変異により発症する場合があります。日本国内での推定患者数は約三一、〇〇〇と推測されています。
ADPKDの腎症状は腹痛、腹部膨満、血尿、蛋白尿、腎機能障害などがあり、合併症としては、高血圧、肝嚢胞、嚢胞感染、脳動脈瘤、嚢胞出血、尿路結石などが合併しやすいということがわかっています。
現在、ADPKDの治療において、根治を目指した治療法はありません。そのため、ADPKDの症状進行を防ぐため、降圧療法、飲水食事などが勧められます。また、二〇一四年にADPKDの進行を抑制する治療薬も承認されています。加えて、医療費助成制度など、ADPKD患者さんを取り巻く環境がようやく整ってきました。
ADPKD患者さんは、三〇〜四〇歳までは無症状で初発症状があらわれて、はじめてADPKDと診断されることがあり、合併症に高血圧などの生活習慣病がみられることから、地域での医療連携が重要と考えられます。


 







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