平成29年10月28日
「糖尿病性腎症に関する最近の知見〜天理コホート研究から〜」
天理よろづ相談所病院 内分泌内科 部長 林野 泰明先生
  糖尿病性腎症は、一九九八年より、わが国の透析療法導入における原疾患の一位となった。二〇一五年十二月現在で、国内で透析療法を受けている患者数全体は三二万四、九八六人で、前年度より四、五三八人増加した。日本の全人口に占める透析患者数の割合は、およそ三八六人に一人に相当する。糖尿病性腎症による腎不全症例を減らす対策としては、早期の診断と治療が不可欠である。当院では、二〇〇九年から外来に通院する糖尿病患者を対象にコホート研究を行っているが、その中で糖尿病性腎症に関する研究も行っており、糖尿病性腎症の発症、進展の予測因子として、尿潜血、血清ビルリビン値、血清尿酸値、ポロトンポンプ阻害薬の使用、などの検討を行っている。
 糖尿病性腎症の発症、進展を予防するためには、血糖のみならず、血圧、脂質の管理が重要であり、また肥満がある場合には減量を指導するなど、多面的な介入が必要である。また、糖尿病性腎症が進展し、eGFRが低下してきた場合には、カリウム、カルシウム、リンを含むミネラルの管理も重要となる。腎臓はミネラル代謝調節に大きな役割をはたしており、その異常は糖尿病性腎症の進行に影響されるCKDステージ3の時期から血清リン、カルシウム、PTHの定期的検査を行い、早期より管理することが重要である。また、慢性腎臓病の患者では、ヘモグロビン濃度が生命予後と関連している。進行した糖尿病性腎症の患者では、貧血の鑑別診断を行うと共に、慢性貧血の場合には適切にESA製剤を用いる必要がある。



 

このページのトップに戻る
定例講演会の目次のページに戻る
天理地区医師会のトップページに戻る