令和2年2月29日 |
「当科の診療と特色 鼻アレルギーと甲状腺腫瘍について」 |
天理よろづ相談所病院 耳鼻咽喉科 副部長 児嶋 剛先生 |
当科は耳鼻咽喉科として頭頸部癌治療を含め地域医療の中心的役割を担っている。二〇一九年の手術症例は総数が一、一四三件であり、内訳は鼻、耳、口腔・咽喉頭、頭頸部腫瘍がそれぞれ二〇〇件以上、甲状腺が一四一件である。今回は特に鼻領域のうちアレルギー性鼻炎と甲状腺腫瘍の治療方針について解説をする。 アレルギー性鼻炎 年々有病率は増加しており、気密性の高い家屋の普及、衛生状態の良い生活環境、花粉量の増加などが原因として推定されている。問診のうえ、検査として鼻内の観察、鼻汁好酸球検査、非特異的・特異的IgE抗体定量検査などをおこなう。治療は抗原の除去と薬物療法が中心となる。副作用の少ない優れた内服薬が開発され保存的治療で改善が見られることが多いが、改善しない際には手術療法を検討する。粘膜焼灼術や後鼻神経切断術が行われることが多く、特に鼻閉に効果がある。 甲状腺腫瘍 近年エコーの普及に伴い無症状の甲状腺腫瘍が見つかる事が多いが、良性腫瘍も多く正確な診断をつける必要がある。診断にはエコーガイド下穿刺吸引細胞診(FNAC)は欠かせず、独自のデバイスを開発、有用性を報告し使用している。四p未満の良性腫瘍は経過観察となるが、小さい傷で機能低下をおこさない腫瘤核出術を行うことがある。悪性腫瘍については基本的に手術加療となるが高リスク群でなければ甲状腺機能が残る葉切除を行うことが多い。残存葉への再発についてはエコー・FNACによる早期発見・治療で対応ができる。一p未満の悪性腫瘍は経過観察も選択肢の一つとされているが、摘出を希望されることも多く症例によっては二・五p程度の小切開で葉切除を行っている。 |
このページのトップに戻る 定例講演会の目次のページに戻る 天理地区医師会のトップページに戻る |