平成30年5月26日
「高齢者の眼と認知症」
奈良県立医科大学 眼科学教室 教授 緒方 奈保子先生
 高齢化社会が進むなか、高齢者が元気に生活するには何が重要か「元気な高齢者のひけつを知る」必要がある。視機能は生活の質(Quality of life:QOL)に影響を及ぼす大きな要素であり、全身に及ぼす影響も無視できない。認知症患者の増加が社会的問題となっているが、視力低下が認知症の進行に関係するとも言われている。
 我々は「ゲンキな高齢者の元気のヒケツをさぐる健康調査(藤原京スタディ)」の大規模疫学研究を行っている。二〇〇七年に奈良県在住の六十五歳以上の四四二七名に実施、二〇一二年には眼科検診(問診、質問表、VFQ25、視力、眼圧、眼底カメラ、光干渉断層計)を新たに追加して追跡健診を行い、二八六八名(平均年齢七六・三歳)に実施した。
 その結果、元気な高齢者は平均で少数視力換算〇・九五と良い視力を維持していた。しかし、年齢とともに視力は低下していた。七十歳以上では二四%が白内障手術を受けており、八十歳以上では四〇%以上が白内障手術を受けたことがわかった。視力と認知機能の関連を検討したところ、視力が悪いと認知機能低下のリスクが約二倍になることがわかった。このように、高齢者の大規模疫学調査より興味ある結果が得られたので紹介したい。

このページのトップに戻る
定例講演会の目次のページに戻る
天理地区医師会のトップページに戻る