平成30年6月30日 |
「薬疹について」 |
天理よろづ相談所病院 皮膚科 部長 田邉 洋先生 |
薬疹は、投与された薬物やその代謝産物による皮膚障害である。皮膚科臨床では多くみられる疾患であり、当科にもご紹介をいただくことが多いが、対応に苦慮する場合が多く地域の最前線でご活躍の臨床医諸兄にもご了解いただきたい点があり、情報提供を行った。 要点を左記にまとめた。 @ すべての薬剤が薬疹の原因となる可能性はある。高齢者ほどその発症の可能性は高くなる。発症機序はアレルギー性や非アレルギー性など多彩であり、発症の事前予測はできない。 A 中毒性表皮壊死症などの重症型薬疹は致死的な場合がある。 B 薬疹はあらゆる皮疹を取りうるため、皮膚症状のみからは原因薬は特定できない、また原因薬を追求する有効な検査法は少ない。再投与検査など誘発検査は危険を伴う。ほかの皮膚疾患との鑑別は重要であり、当科では生検を行う場合があるが、薬疹は非特異的な結果となる場合が多い。 すなわち、皮膚科でも薬疹の原因薬の特定は難しい点はご了解いただきたい。 C 薬疹の治療は、疑われる被偽薬をできるだけ中止することが重要である。皮膚科から投薬の中止を依頼した場合は、処方した医師が投薬のメリットとデメリットを患者に説明し、継続か中止かの判断をお願いしたい。 D 症例として、アロプリノールによる中毒性表皮壊死症、抗痙攣剤による薬剤性過敏症候群(DIHS)症例、DPP-4阻害薬による水疱性類天疱瘡型薬疹、H.pylori 除菌療法による薬疹、分子標的薬による薬疹症例を供覧した。 治療のための投薬により薬疹が生じて患者を苦しめる場合はある。ポリファーマシーの観点からも、高齢者への長期大量の投薬は今後是非改善されるべきであり、臨床医諸兄の認識とご高配をお願いしたい。 |
このページのトップに戻る 定例講演会の目次のページに戻る 天理地区医師会のトップページに戻る |