平成30年8月4日 |
「動脈硬化予防ガイドライン2017年から考える脂質異常症の治療戦略」 |
市立奈良病院 循環器内科 部長 堀井 学先生 |
二〇一七年に日本動脈硬化学会から刊行されている動脈硬化予防ガイドラインが改訂された。その内容を中心に脂質異常症の治療戦略を考えてみた。 ヒトにおける脂肪は最も重要な栄養素の一つでありエネルギーとして利用されるほか体の様々な細胞がその構成要素として使用している。脂質は水に溶けないため血中にはアポ蛋白質と結合してリポ蛋白質の形で血中を運搬されている。リポ蛋白質にはキロミクロン、VLDL、LDL、HDLなどの種類がある。それぞれのリポ蛋白によってトリグリセリド、コレステロール、リン脂質、たんぱく質の含有量が異なっており、動脈硬化作用を有するものや抗動脈硬化作用を有するものがある。コレステロールは小腸で吸収され、また肝臓でも合成され血中に放出される。脂質異常症は一般的には食事や運動習慣の関連する生活習慣病と考えられるが、先天的にLDLコレステロールが著名に上昇し、動脈硬化性疾患が若年で発症する家族性高コレステロール血症(FH)がある。 動脈硬化性疾患予防ガイドライン二〇一七年版で大きく改訂された点は、吹田スコアを用いた冠動脈疾患発症予測モデルを使用する点である。実際に臨床の現場で使用するには少し煩雑で時間も要するものとなっていることから、簡易版も用意されている。吹田スコアにより、一次予防は、低リスク、中リスク、高リスクに分類され、二次予防と合わせて四段階の管理区分に分類される。それぞれの脂質管理目標値は前回のガイドラインとほぼ同等であるが、すなわち例えばLDLコレステロールの管理目標値は低リスクで一六〇r/dl未満、中で一四〇r/dl未満、高で一二〇r/dl未満、二次予防で一〇〇r/dlである。最新の欧米のガイドラインでは二次予防の目標値はLDLで七〇r/dl未満となっており、今回の日本のガイドラインでは二次予防の中でもより厳格な管理が必要な病態としてFH、急性冠症候群、糖尿病などが挙げられており、これらは七〇r/dl未満が推奨されている。脂質異常症に対する薬剤として小腸での吸収を抑えるもの、肝臓での合成を抑制するもの、PCSK-9を阻害するものなどが主に使用されている。 次に右記ガイドライン改訂に応じて刊行された脂質異常症診療ガイド二〇一八年版に従って実際の治療方法や患者教育方法等を概説した。 以上の内容を平成三十年八月四日に講演させていただいた、このような貴重な機会をいただき関係者の皆様に深謝申し上げます。 |
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