平成31年3月31日
「乳癌治療 up-to-date」
小林クリニック 院長 小林 豊樹先生
  本邦において乳癌患者数は年々増加の一途を辿っており、二〇一六年で年間九万五〇〇〇人以上の方が新たに乳癌に罹患している。その数は女性十一人に一人が罹患する頻度です。出生率の低下や高齢出産、栄養状態などエストロゲンに曝露されていることが一因と考えられているが、遺伝性乳癌卵巣癌症候群に代表されるような遺伝疾患であることも判明しています。
乳癌は非常にガイドラインが整備されている疾患です。日本乳癌学会が編纂している「科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン」は、書籍のみならず、 インターネット上に全面公開をしており医療関係者だけでなく患者や市民もすべて閲覧することが出来ます。その緊張感のなかで、我々は診療を行っております。
乳癌の診断において、基本となる画像検査がマンモグラフィと乳房超音波検査です。マンモグラフィは検診でも用いられておりますが、客観的に評価でき、さらに石灰化などで見つかる非浸潤性乳癌の発見に威力を発揮します。超音波検査は、リアルタイムで病変を検知出来る検査ですので、その後に行う病理学検査の手技に際して重要な役割を果たします。病理学検査には、穿刺吸引細胞診と針生検による組織診があります。また、造影乳房MRI検査や造影超音波検査が手術を行う上での、拡がり診断に有用です。
乳癌の治療は、手術治療、薬物治療、放射線治療からなります。手術はこの三十年間で標準治療が大きく変わりました。以前は、乳房のみならず胸筋やリンパ節をすべて切除する手術でしたが、徐々に胸筋は温存するようになり、さらに乳房も温存する手術へと推移して行きました。さらに、センチネルリンパ節生検によって腋窩郭清の省略や、二〇一三年にはインプラントによる乳房再建術が保険収載となり、機能温存が標準医療となっております。
薬物治療においては、乳癌を五つのサブタイプに分類し、薬剤の感受性に応じて、内分泌療法、化学療法、抗HER2療法の三種類の薬剤の組み合わせによって治療を行います。


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