平成20年4月 | ![]() |
医師法21条 | |
「医師は死体または妊娠四カ月以上の死産児を検案して異状があると認めた時は、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」この法文の解釈を巡って医学会でも意見が分かれている。素直に解釈すれば、行きずりの死体を医師が診たとき、伝染病などの危険性はないか、事件性はないかなどを検案して、異状が有れば警察に届けよ。また放置された死産児も同様であるということに読み取れる。しかし、正規の医療行為で最初から関わっている主治医が診療中に結局死に至った症例について、異状死であれば警察に届ける義務があると解釈される。法医学会はガイドラインを出し、この届ける症例は「診療行為の過誤や過失の有無を問わない」とした。対象がほぼ無限に広がった。一方、日本学術会議からは「医療行為中あるいはその直後の死亡にあっては、まず明確な過誤、過失があった場合あるいはその疑いがあった時は、純然たる病死とは言えず、届出義務が課せられるべきである。」と、異状死の範囲を制限している。また検案した、つまり死亡を確認した主治医が、警察に届けるのは、自己の不利益になる可能性があり、憲法に抵触する可能性があるとの主張に、広尾事件で最高裁は不利益になっても医師は届ける義務が有る旨の判決を出したため、21条の解釈は法医学会の解釈に添うものとなった。 しかし、現実の医療現場では、事故か事件が明らかでない症例でも警察に報告し、場合によっては逮捕されるということが、診療行為の萎縮につながり、ひいては産科・外科医の減少の原因になっているとして対策が望まれていた。四月三日の新聞報道では、厚生労働省が医療事故が疑われた際、第三者が原因などを究明する事故調査委員会の第三次試案を発表した。これによれば診療中の予期しない死亡事例(異状死)があった場合に医師法で義務付けられている警察への届け出について、試案は不要にすると明記。届け出先は委員会に一本化することになる。 |
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