平成20年6月
「ジェネリック薬品の広告に思う」
最近ちょっと報道されてサッと消えてしまった話があります。生活保護制度の医療担当規則の改正で、後発医薬品を使用するよう努めなければならないと定められた話です。ここで後発薬品とはいわゆるジェネリック薬品のことです。徹子さんがテレビのコマーシャルで「勇気を出して言ってみよう」といっているあれです。この厚労省の通知では、「同じ効き目、安全性で値段が安いため、生活保護制度では、医学的理由が有る場合を除き後発医薬品を使ってください」と書いてありました。後発品は最初の開発費がかからない分安くなる理屈です。まったく同じ成分でまったく同じ効き目とされていますが、私には薬によって先発と後発で使った感じが違うと感じられることがあります。医師仲間での噂も耳にします。同一の成分の後発薬品を作る会社は多いと数十社あり、すべてをチェックすることは一開業医には不可能です。同じ薬価の後発品でも卸値はいろいろですから、当然後発薬品の間でランクの違いがあると考えるのが自然です。さらに、先ほどの通知の中で「医学的理由のある場合を除き後発薬品を使うように」と但し書があります。もしまったく同じものなら医学的理由の有るはずがありませんから、ひょっとしたら先発と後発でどこか違っているのではないかと疑ってしまいます。
 さて、仮に後発、先発がまったく同一のものであるとしましょう。それでも気になるのが、前述の徹子さんのコマーシャルです。新薬と同じ効き目のジェネリック薬品という宣伝文句です。新薬と先発薬品とがなんとなく同じ言葉のように使われています。先ほどの厚労省の通知には、明確に先発薬品、後発薬品と書いてあります。新薬という言葉はどこにもありません。新薬という言葉の定義は知りませんが、通常は新しい薬という意味だと思います。何が新しいのか。効き目が今までの薬と違って新しいか、作り方がまったく新しく副作用が少なくなったか、とにかく新しいのです。その新薬と同じ効き目の後発薬品は本当に有るのでしょうか。薬の特許が切れてどの薬品会社も製造してよくなったとき、初めて後発品が出てくるはずです。したがって後発品がある薬の先発品は、厳密に言えば新薬ではありません。徹子さんが新薬と同じ効き目と言っているのは、やや誇大広告に過ぎると言わねばなりません。頭を切り換えて、後発品とまったく同じ効き目、同じ成分の新薬があるとしましょう。それに特許を与えて、後発品と格段に違う高い値段をつけているとすれば、これは許されることではありません。四月末の地区会長協議会で、新薬と先発薬品との違いを尋ねましたが、全員がきょとんとされていました。薬にプロの医者でも明確に認識していないので、一般の方へのコマーシャルが疑問なく流されているのはやむを得ないと思います。しかし誤解や錯覚を利用して命に関わる薬の広告をすることには納得が出来ません。このようなメディアの風潮を見過ごしながら、生活保護制度に後発品を使うよう強制する厚労省の姿勢に強い疑問を持ちこの原稿を書きました。そうしたら今月の協議会で、厚労省が早速この通達を撤回してきたことが判明しました。世論の厳しい指摘があった上に、厚労省も内心忸怩たるところがあったに違い有りません。私の個人的な意見では、一旦特許が切れて後発品が出てきた薬については、先発も後発も同じ値段にすべきであると考えます。そうすれば実績のある先発品が安心して圧倒的なシェアを占める筈で、わざわざ先発と後発の値段に差をつけなくてもよいことになり、後発品も先発品に変な引け目を感じなくても済みます。そしていい加減な後発薬品会社は淘汰されて、ジェネリック薬品全体の品質も維持されることが期待できるのではないでしょうか。
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