平成20年7月

「介護保険認定審査会の運営について」


今月開催された臨時代議委員会で、平成十九年度の決算報告が全員一致で承認されたが、このとき出た質問をもとに介護認定審査会について議論された。要介護度の認定で、変更件数が地域によって大きく違っていることを、奈良市医師会代議員の谷掛先生が質問した。平成十八年度の集計では、軽度か重度かのいずれかに変更したのは、奈良県で一六%なのに対し、全国平均は二七%と大きく異なっていた。担当理事の竹村先生は、奈良県の場合、変更率が全国で最も低く、一方再審査請求は相当数に上ることを説明された。これは奈良県においてきわめて法律に則した運営がなされている結果が反映されているとの発言があった。この大きな差の原因は何か。代議員会後の地区会長協議会で私は更に詳細な説明を求めたが、突っ込んだ議論はなされなかった。
奈良県の中でも地域によって大きな差がある。例えば奈良市は変更率が五・三%で最低率であり、磯城郡は三七・七%と最高率であった。天理地区は九・九%と県内では低いレベルに属する。天理地区の介護認定審査会会長の任に当たっている私としては、この問題は重要でもっと詳細で綿密な検討がなされるべきと考えている。谷掛先生が指摘されたように、介護認定審査会で一次判定の結果が訂正されることがなく、調査表の結果のみで介護度がほぼ一〇〇%と決定されるようになれば、医師意見書の意義が軽視され、さらに認定審査会の存在意義が問われることとなる。
審査対象がきわめて多様性に富む、実際に生きておられる高齢者の方々であるから、身体条件、生活環境、経済状況、介護力の有無などが大いに異なり千差万別と言って過言ではない。この診査を機械的にすることが如何に無理なものかは医療従事者なら理解できる。ここに経験者の認定審査会での議論の価値がある。また医療状況を把握した意見書の存在理由がある。
従って宮城県の柔軟な審査会運営を十分研究し、当地区医師会にもよい点は導入するべきである。最も問題となるのは変更手続きのうち、変更の根拠を示す段階である。変更するための条件として、特記事項、主治医意見書の内容に基づき通常の例に比べて長い(短い)時間を介護に要すると判断される場合とされている。特記事項に記載されている内容を変更する事は出来ない。そのまま文字通りであれば、コンピュータで計算した結果と成らざるを得ない。文字の奥、行間を読み取ることとなる。例えば日常自立度の組み合わせが、要介護4では〇%であっても、一次判定が要介護4となっているケースは少なからずある。この場合介護に長年従事している経験者には、どうしても4度は重度過ぎると直観的に判断できる。しかし具体的な根拠が示せない。そこで調査特記事項の二,三,四群の内容を総合的に見るとそんなに重度とは言えないという程度の根拠しか示せないこととなる。それでも特記事項の具体的な内容を指摘していることとして変更できるのか。この解釈の運用の幅が、合議体、地域によって大きくばらついていると推測されるのである。
そうであれば、せっかく全国組織である日本医師会がお互いの情報を交換して、より大きな裁量権を認定審査会が発揮できるように改革していくべきではないかと考える。なぜこのように介護を受ける人たちにとって重要な、大げさに言えば介護される人のその後の人生を左右するような介護度の診査に、医師会が熱心に取り組まないのかと不思議でならない。折角谷掛先生が大切なポイントを代議員会で指摘したのだから、執行部は誠実に調査し検討し説明すべきではないかと私は思う。

このページのトップに戻る
医師会だよりの目次のページに戻る
天理地区医師会のトップページに戻る