今回の特定健診は壮大な実験だと言われます。失敗しても誰の責任にもならないやりたい放題の実験です。私たちは自分たちの意志にかかわらず無理矢理この実験に参加させられています。実験装置がはなはだお粗末で、結果を入力してもなかなか受け付けてくれません。厚生労働省のデータベースに登録できなければ、いくら患者さんに有用な情報でも評価されず拒絶されてしまいます。そこで採用してもらうよう電子化処理をして国保連合会や健保組合基金にデータを送りますが、何がどう悪いのか詳細は不明でも駄目なものは駄目だと門前払いをくらいます。何かコツがあるに違いありません。もちろん袖の下は無効です。相手が機械ですから脅しもすかしも効きません。ひたすら全開示されていない厚労省のブラックボックスのソフトに受け入れてもらうよう、我と我がデータを改良して努力を重ねます。その結果とうとう私たちの診療所ではデータを自力で提出することが出来そうな段階になりました。現在は検査業者のメディックさんにオンブにダッコですが、近い将来自力更生が実現いたします。なおこの努力の道には奈良県社会保険基金の森田さんに親切な助言を度々頂きました。お礼を申します。ありがとうございました。
そこで、これまでの血と汗の歩みについて少しお話ししたいと思います。その中で何がいけなかったのか、どの点が厚生省のソフトに気に入られなかったのかについて、ポイントを示したいと思いますのでご参考にしていただければ幸いです。もし確実に再現性があると確認できれば、これを可能にした私どもの専門スタッフの解説を医師会でご披露させていただくことも可能です。その節はご希望があればお申し出下さい。
では大切なポイントを箇条書きにして説明を加えていきます。これまで間違いが気づきにくかった諸点です。ただし以下の説明は日医総研のオルカプロジェクトから出された、特定健康診査システムについての説明です。
1 すでに配布されている日医特定健診ソフトバージョン1.08のCDから、このソフトをコンピュータにインストールします。コンピュータを再起動させて、スタートからプログラムを選び、特定健診ソフトを選択します。これが立ち上がったら、アップデートのアイコンを選んで、必ずアップデートをしておきます。現在バージョン11.2となっているようです。
2 データを入力する前に必ずしておく作業があります。基礎的な事項を埋めていきます。この中でマスターメンテナンスを開き、基準値を入力するとき、上限と下限の入れ方に注意して下さい。
3 医療保険者情報マスターメンテナンスでは、委託料単価の入力が要注意です。基本だけでなく、貧血、心電図、眼底の価格も必ず入力します。保険者によって異なりますから、幾つかのパターンを作る必要があります。この際価格の入力は、基本は社保の場合、七九八〇円、国保の場合、八五〇五円となります。但し細かい数字には自信がありませんので、よく確かめて入力して下さい。
4 こうして各保険者にあったパターン(入力シート)が出来上がります。これにデータを入力していきます。受診券の情報を入れていきますが、保険者によって、まったくバラバラですから十分注意してください。基本的な健診だけか、詳細な健診なのかを区別します。また基本的健診でも、支払い負担が定額か、定率かを受診券で確認して入力します。詳細な健診は、追加健診、詳細健診、人間ドックがあります。なければ、〇円で、各項目ともに「なし」と入力しておきます。
5 受診者情報を入力するときには、住所入力時に、変換すると番地の数字が半角になりやすいので、必ず全角であることを確かめて下さい。
6 健診、問診結果データの入力で注意しなければならないのは、健診パターンと請求区分の内容が、まったく同じで一致していることです。
7 後期高齢者の健診の場合は、メタボリックシンドローム判定、および保健指導階層化の所を、いずれも判定不能にしておかねばいけません。
8 ジップファイルに変換するときには、その月に請求処理をする患者さんのデータを、すべてまとめて選択し(反転させ)一度に処理します。コンピュータが表示する項目を、請求処理、請求データ編集、HL7出力、HL7外部コピーの順に、順次一括して行っていきます。但しまとめるときには、あらかじめ国保と社保の区別は必ずし、二つのグループに分けておいて、別々に一括処理するのです。
9 暗号化は、保存用ファイルに入ったジップファイルを、国保と社保にそれぞれに分けて行います。メディアで提出するのではなく、通信で送信する場合は暗号化処理は不必要となります。
以上は私の診療所で試行錯誤して見つけた。ピットホールです。実際の手順はマニュアル通り進めてください。ご健闘を祈ります。
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