平成21年11月

新型インフルエンザワクチン医療従事者全員接種へ

今回の新型インフルエンザワクチン接種について、数量の不足から優先順位が決められた。新しい病気に立ち向かうのは医療者であり、この力なくしては戦えないというのは至極当たり前の考えである。一日に数十人もの新しい感染者が病院に押し寄せてくる事態に、医療者自身の防御をしっかりとしておかないと安心して戦えない。病院に加えて一般の診療所が戦列に参加しないと、今後見込まれる大量の患者を診て治療することは不可能である。ところが診療所は医師と看護婦だけで成り立っていない。事務その他のスタッフが患者の前面に出て応対し診療が進む。ある意味では最も危険な前線に立たされている。その上、多くの人々がパートという不確定な身分でいる。その人達に無防備で戦えと言うのはあまりに残酷な話である。十分な防備をした上でしっかりと病気に立ち向かうことが必須条件である。これが保障できないと診療所の活動は不可能である。その現場を分かっていない官僚達が、配給された分だけで我慢して頑張れと言う。これは丁度満州で関東軍の正規軍が去った後、竹槍を持たせて、ソ連軍と戦うのを強いた当時の軍部官僚と同じ発想である。
われわれ医師会はこのような理不尽に黙って耐えることは出来ない。現在も感染の危険に身をさらして、医師である義務感、責任感で、インフルエンザの患者を嫌な顔もせず診療している。こんなまじめな医療集団に、当然行政としてやるべき防御態勢の提供を放棄して、なお一層危険な状況に押し込んでおいて、知らぬ顔をするこの国の厚生官僚に我々の声を届けねばならない。
また届けるのが日本医師会の責務であり存在意義そのものである。これを訴えることが出来ないのであれば、我々はどうして今後も医師会員であらねばならないのか理解に苦しむ。自分たちの同僚を危険にさらしてまで、診療を続けることはできないと明確に宣言し、直ちに医療者全員にワクチンの接種を実現しなければ、これ以上のインフルエンザ診療を拒否するべきである。
(以上を十月の会長協議会で配布いたしました。)






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