1.インフルエンザワクチン
今年(二〇〇九年)のインフルエンザは、新型と季節型の二つに分けて検討されている。インフルエンザの表面には、HA・NAの二つの人体攻撃因子がある。HAはウイルス表面の赤血球凝集素(抗原物質)であり、NAはノイラミニダーゼ(酵素)である。HANAちゃんとすれば覚えやすい。ワクチンが作れるのは物質であるHAであり、治療薬は専らNAに対する酵素阻害である。
流行予測シナリオとして、山型のグラフが示されている。これは面積でみるものであり、全国では十月二十五日に五〇〇万人の感染が起きている。シナリオではこの二~三週間後にピークがあり、二〇〇〇万人が感染する。そして、天理市の新型流行は全国平均から二〜三週間遅れと判断していた。(しかし、実際のピークは十二月第一週、一四〇〇万人であり、山の形も予想以上になだらかであった。天理市は急激に増加して、ピークが同じく十二月第一週になった。)
2.日本脳炎ワクチン
旧型の作製にはマウス脳が使われていた。重症の急性散在性脳脊髄膜炎ADEMの副作用例があり、二〇〇五年に接種が一時中止された。二〇〇八年に中止が解除され、さらに細胞培養により作製された新型が二〇〇九年に発売された。現在二剤が並行使用されている。
日本脳炎ウイルスを持った小型アカイエカの分布が北上しており、島根・福井県が浸潤地域となり、実際に感染者が出ている。奈良県ではブタの抗体価が測定されていないが、浸潤地域になっていることが推測される。
3.Hib(インフルエンザ菌b型)ワクチン
二〇〇九年に認可された。乳児期三回、一歳で一回接種、一回に自費で七〇〇〇円かかる。一万人に一人が罹患するヒブ髄膜炎を予防することには意味があるが、費用が高すぎる。各医院の割当てが月に三名であり、積極的接種にはほど遠い状況である。
4.MRワクチン
一九九三年のMMRによる髄膜炎多発があり、二種ワクチンとなった。麻疹輸出国の汚名返上のため、現在中学一年と高校三年に追加接種を行っている。
5.ポリオワクチン
日本では、安価なOPV(生ワクチン、経口)が行われているが、稀に家族にポリオが発生する、先進国では高価なIPV(不活化ワクチン、注射)を、他と混合して接種している。
6.肺炎球菌ワクチン
23価ワクチン(現行、成人用)のみである。先進国では7価ワクチン(乳幼児用)が行われているが、日本でも来年認可の予定である。DPTワクチンと同時接種となるだろうが、他国と同様の多種混合ワクチンが早急に検討されなければならない。日本のワクチン行政は先進国の中では最も遅れている。
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