第二回天理市新型インフルエンザ対策協議会についての報告と、
医師会としての今後の対策に関する協議内容のまとめ
【1】新型インフルエンザ対策に基づく段階分類について
WHOは既にフェーズ5と宣言し、近いうちにフェーズ6に引き上げられると予想される。今年二月に厚労省が新型インフルエンザ対策を改定して発表した。これによると、従来のフェーズ分類から、国内感染拡大状況により、第一から第四段階までの分類に変更された。その概略を以下に説明する。
第一段階 海外発生期
第二段階 国内で発生(現在はこの段階)
患者に対する感染症指定医療機関等への入院措置及び
抗インフルエンザ剤投与
住民への抗インフルエンザ剤予防投与の有効性判断
学校休校、集会、外出の自粛
第三段階 国内で患者の接触歴が追えなくなった事例が生じた段階
1 拡大期
各都道府県において入院措置による拡大防止効果が見込める時期
感染している可能性がある者が受診する医療機関を限定し、医療機関を介した感染拡大を抑制しながら、患者に対しては感染症指定
医療機関入院措置
2 蔓延期 感染拡大防止効果が十分に得られなくなった段階
医療機関での感染の可能性を少なくするため、発症者のうち軽症者は原
則として自宅療養とし、電話相談などで医療機関受診の必要性を判断
ただし重症者は、原則としてすべての医療機関で入院の受け入れる、 抗インフルエンザ剤の予防投与は原則として縮小する
【2】この段階のうち、天理市として独自に行う対策
第二段階 県レベルのでの対応に任せる
一般診療所は直接の受診を断り、県の感染症指定医療機関に紹介し、必要
に応じて患者は自力で受診するか、救急車などの搬送を依頼し対応する
第三段階 拡大期の途中で、指定医療機関が満床となる時点
市立病院が感染症協力病院として入院措置の受け皿となる
同時に発熱外来を設置、始動する
発熱相談窓口を市役所に設ける
第3段階 蔓延期になるとすべての医療機関で患者の受け入れをする
入院も市立病院に限定せず、すべての可能な病院で受け入れる
そこでこの段階では、市立病院の発熱外来は閉鎖されている
以上の拡大期のある時期から蔓延期の初頭までの期間が、発熱外来の実施期間である。発熱外来は最長7日間の運営とする。この時期は蔓延の状態次第で短縮される。ただし発熱外来の開始と終了は市の対策本部で決定する。この際従来の休日診療は休止する。
【3】市立病院の対策案
@ 発熱外来は、前栽小学校に設置、諸設備の設置をする責任は市役所にある。
A 発熱外来で使用する学校諸施設の範囲は、前もって学校当局に了承を得る。
B 市立病院から1チームの医療スタッフ(看護師を含む)が派遣される。
C 必要に応じ、もう1,2チームを追加派遣できるように準備する。
D 追加派遣に対し天理よろづ相談所病院と地区医師会が協力する。
E 事務関係は、市役所から派遣される。
F 外来診療は、問診で処理する。問診票の素案は提示されている。
G 問診のみで治療不要か、タミフル服用を指示し帰宅か、あるいは、
インフルエンザA型を確認の上、重症であれば入院をさせる。
H タミフル処方は発熱外来でするが、薬剤の発出を発熱外来でするか、
あるいは市立病院本院でか、または他の場所でするか未定。
I この薬剤発出の運営に薬剤師会の協力を得る。
J 市立病院では1フロアを新型インフルエンザ専用病床とする。
K 入院の決定は、インフルエンザA型を確認することが前提となる
L 胸部レ線などの検査は本院で必要に応じ実施、入院適応を判断する。
M 市立病院1フロアを確保するため、入院中の患者を一部自宅待機させ、
一部は他院に転院させる。これに天理よろづ相談所病院、高井病院、
および奈良東病院、高宮病院が全面的に協力する。
N 入院中のインフルエンザ患者の診療に、高井病院から人的協力を得る。
O 発熱外来の設置申請は、市役所が主体的に行う。
【4】医師会の発熱外来参加について
診療する者の身分保障(二次感染に対する補償、医療事故に対する補償)
が明確になることがすべての前提。
できれば、休日診療所に準ずるか、市立病院の臨時スタッフとして処遇。
【5】市の新型インフルエンザ対策本部立ち上げ
発熱外来の不要論が既にあり柔軟な対応が望まれるが、これには強力な意志決定機関が必要であり、市長を長とした対策本部の設置が不可欠である。
今回の新型インフルエンザは、当初予想していた鳥インフルエンザとは
異なり、季節インフルエンザと大差がない。重症化することが少ないと
見込まれる。またタミフルやリレンザの治療、予防効果が明確である。
これらを前提にすれば、蔓延期には発熱外来を設置せず、また専用入院施設を限定せず、すべての医療機関において患者を受け入れることが可能である。
発熱外来設置には学校が休校になることが前提となっており、この指令が発令されなければ実働しない。逆に発熱外来の診療能力を遥かに超える感染拡大に対しては、発熱外来を閉じねばならない。従って開始と終了の判断は市の対策本部に一任されるべきである。
(なお発熱外来はその有効性を考慮し、最長七日間で終了するものとする。)
【6】小児科に対する対策
五月二日の会議で小児科における対策について以下の重要な指摘があった。
「上記の発熱外来では小児科、特に乳幼児の診療を適切に行うことは不可能である。成人患者に対するように問診のみで治療の要否を判断できず、インフルエンザ以外の発熱疾患を種々考慮する必要があり、一人一人実際に診察し、必要な検査をしなければ大きな過誤を引き起こすと危惧される。」
今回は幸い鳥インフルエンザ(H5N1)ほどの強毒性ではないとされ、小児科に関しては、市内小児科医の全面的な協力に依拠して各医療機関で、発熱患者のみを隔離しながら慎重に診療する体制をとりたい。ただし、これには天理よろづ相談所病院の入院受け入れが必須の前提となる。
今後、鳥インフルエンザ(H5N1)に対する小児科の対応については、以上の対策は前例にならず、更に早急に真剣に検討されねばならない。
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