過日大阪で医師が孫にワクチンを接種したことがニュースになっていました。この件で、批判されることは二点あると思います。
1 医師の特権を悪用して自分の孫に優先的に接種したこと
2 最優先の患者さんがいるのに、(あるいは最優先の対象になっている自院の医療従事者に打たずに)自分の孫に打ったこと。
1については、全く非が医師にあると思います。
2については、小児が優先されている現時点では、批判の対象にはならないことになるはずです。
つまり、現在の小児、学童優先の体制は、本来の重症患者優先の方針を踏みにじって、厚労省が勝手に方針転換をしたことで出来上がっています。なぜなら、現状では重症で死亡率の高い、最優先の患者には一月に二回、十回分ずつ配布しているから、重症患者を七十、八十人抱えている診療所では二ヶ月も待たされていたのです。それにも拘わらず、小児は優先的に接種されて、場合によっては接種しきれず余っている施設もあると聞きます。
本来、インフルエンザワクチンは小児には効果が確定せず、感染予防効果は期待できないとされています。そこで重症化に効果があることから、老人に公費を使って接種するようになったのです。今回の新型ワクチンについても、重症化を防ぐことに主眼が置かれていたはずです。
ところが今回の中学三年生の場合は、感染予防効果により受験日に発病しないことを期待して前倒しをしています。これは理論矛盾です。
結局私の思うところでは、10ccバイアルの処分に困った厚労省が、集団接種できる小児や学童をターゲットにして、小児を重点的に守るという大義名分で、10ccバイアルの処理に走ったのだと思います。やむを得ぬことかも知れませんが、厚労省は重症化防止の方針を変更したこと、10ccというバイアル生産を認めたことについて、ハッキリと間違いを認めるべきと考えます。
今回のワクチン騒動については、今後の新型感染症対策のため、詳細に総括されねばなりません。まず優先接種の基準をハッキリ決めておき、どのような世論があってもブレないで実行する体制の確立が重要です。次に関係する専門学会から間違いのないスタッフを集めて、官僚の意見に左右されない学問的に間違いのない方針を決定する手順を決めておく。ワクチンの生産が最優先されるべきで、輸送手段や販売手段などの問題は無視して良い。つまり今回のような10ccバイアルなどは初めから止めておく。ワクチンの配布には行政だけでなく、現場の医療機関の責任者が参加し、医療の実情にあった適切な配布、流通を図る。国家的危機と認識し、ワクチン接種に関わる副作用については実施する医師に責任を丸投げすることなく、国が正面から責任を負うことを国民に宣言する。また不幸にして起こった問題には国が全面的に補償することが必須である。
騒動が落ち着いてきた現段階では、国産ワクチンが過剰になっているという馬鹿馬鹿しい事態が起きている。各医療機関に残されたワクチンは、不足する医療機関へ譲渡して使用するべきであるが、薬事法違反の恐れがあるから使用せずに破棄せよと、全く理解不能な話が聞こえてくる。何を考えているのか、何とかして欲しいと考えるのは私ばかりでしょうか。
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