腰部症状としての間欠性跛行
奈良県立医科大学 整形外科 助手 植田百合人
一般的に腰部症状の代表として腰痛と座骨神経痛がよく知られている。しかしながら最近では高齢化に伴う腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行が増加している。
間欠性跛行は一度に長い距離が歩けず、しばらく歩くと下肢痛や下肢しびれ感、筋力低下などが生じ、休憩しなければ歩けなくなり、休憩すると再び歩行可能となる症状で、主に血管性のものと腰部脊柱管狭窄症などによる神経性のものに大別できる。
血管性間欠性跛行は大腿動脈から末梢の下肢血管の動脈硬化などによる血流低下により生じ近年の高齢化社会、食生活の欧米化などにより増加しており、喫煙で憎悪する。
神経性間欠性跛行は脊椎の先天性要因、後天的な椎間板変性、靭帯肥厚、すべりなどによる馬尾や神経根の圧迫症状により生じる。血管性のものは主に筋肉の
Anoxia により生じ、神経性のものは馬尾や神経根の圧迫、血流障害によるため、安静時の両者の鑑別には足部皮膚温、足部の動脈拍動触知の可否、知覚障害(麻痺、 痛み、しびれ感)筋力低下の有無が役に立つ。両者の症状の発現と回復状況の相違、たとえば自転車による運動負荷、腰部姿勢による症状の変化(屈曲、伸展)、装具の効果(杖、歩行車、体幹屈曲装具)、回復までの姿勢(立位でも回復するか、坐位をとらないと回復しないか)なども鑑別に有用である。他覚的な診断としては単純XP、CT、MRIでの腰部脊柱管狭窄の証明やMR-Angiography、超音波ドップラー等による下肢血行の低下の証明などがあり、より侵襲的な検査としての血管造影の必要性は減少している。
治療としては神経性のものに対しては姿勢維持装具、杖使用、歩行車の使用がある程度有効であるが、血管性のものにはこれらの治療による改善は期待できない。しかし両者とも血流障害の要因が共通するため症状が軽度であれば、ビタミンE製剤や血小板凝集抑制剤などの薬物療法を処方することが多かったが、最近強力な血管拡張作用や血小板抑制作用を持つPGE1製剤が使用できるようになり処方の選択範囲が広がった。
H15.7.26 於 御杖村開発センター
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